株式市場はさらに上を目指せるか?

2023/11/17

今週の株式市場ですが、日経平均の動きを辿ってみると、週初はやや静かなスタートでしたが、15日(水)の取引を迎えると、今年最大の上げ幅となって、33,500円あたりまで一気に株価水準を切り上げるといった具合に、急に動意づいてきた印象となっています。

今週は、CPI(消費者物価指数)や小売売上高といった、米国の10月分の経済指標をはじめ、米中および日中首脳会談の行方や、週末の17日(金)に期限を迎える米連邦政府の「つなぎ予算」を前にした米議会の動向など、とにかく注目のイベントや材料が多いのですが、まずは、米10月CPIの結果を好感して上昇した米国株市場の流れが日本株にも波及した格好です。

さらに、この日は10月分の中国の経済指標も景気減速から持ち直すような結果だったことも、このところ弱い動きを見せていた中国関連株にとっては買い直しのきっかけになったと思われます。

このように、株高をもたらした米10月CPIの結果について、より細かく確認すると、前年比の上昇率が3.2%となり、市場予想(3.3%)を下回ったほか、前月比も横ばい(0.0%)で、こちらも市場予想(0.1%)をやや下回りました。一般的に、こうした経済統計では、前年比で現在の水準感を探り、前月比の推移で方向感を確認するという見方をしますが、今回の結果は、水準感と方向感の両面で、米国インフレが落ち着きある状況であることを確認したと言えます。

また、物価には食料品やガソリン価格といった、物価変動の上げ下げが激しいものと、サービス価格や家賃などの、価格変動が緩やかなものとが存在しますが、こうした物価変動の大きいものを除いた、CPIの「コア指数」についても、前年比で4.0%(予想4.1%)、前月比で0.2%(0.3%)という結果となり、こちらもインフレ率の伸びが鈍化傾向にあることが示されました。

いずれにしても、「米金融政策の利上げサイクルが終焉した」という見方を補強し、株高をもたらしたと言えます。では、この先の株式市場がさらに上値を目指せるかどうかが気になるところですが、米金利の動きだけで考えるならば、ポイントがいくつか挙げられます。

まず、足元の株式市場は、多くの投資家が「金利上昇よりも低下の可能性が高くなってきた」という共通認識のもとで上昇していますが、その先にある、「どこまで金利が下がるのか」については見方が分かれます。ですので、ある程度まで株価が上昇した後、新たな買い材料が出てこなければ株価上昇の勢いが弱まることが想定されます。

続いて挙げられるのが金利の水準感です。今回のCPIの結果を受けて、米10年債利回りは4.4%台まで低下しましたが、米経済の強さと株価の上昇を伴って金利が上昇していた8月の水準(4.3%台)よりもまだ高い状況ですし、FRBが目標としている2%台からもまだ距離があります。また、株式の益回りと債券の利回りの差である「イールド・スプレッド」も狭い状況となっており、株式市場には割高感もあります。そのため、株価が一段高するには、金利水準自体がさらに低下していくことが必要です。

そして、金利の低下の背景にある米経済が、市場が前提としている「ソフトランディング」ではなく、思ったよりも景気が後退してしまう「ハードランディング」となる懸念も燻っており、株式市場は夏場の高値を超える上昇があったとしても、中長期のトレンドとしては継続できないかもしれません。

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