「打診買い」から「本格上昇」への条件

2023/10/13

連休明けで迎えた今週の国内株市場ですが、これまでのところ株価の反発力が目立つ展開となっています。

11日(水)の取引では、日経平均の終値が急落前の9月29日終値(31,857円)を超えてきたほか、取引時間中には節目の32,000円台に乗せる場面もありました。TOPIXは9月29日の終値には届かなかったものの、節目の2,300pや75日移動平均線を回復しており、全体的には先週の急落分を取り戻すような動きと言えます。

前回のコラムでも指摘したように、先週は株価が急落したとはいえ、テクニカル分析的な節目を下値の目安にしながら下落するなど冷静な一面ものぞかせていたため、今週の株価の戻りも勢いがつきやすかったと思われます。

また、今週に入ってからの株価上昇の主因として、米国の金利低下傾向が挙げられます。

先週末に公表された米9月雇用統計では、非農業部門雇用者数が予想以上の増加となったものの、平均時給が予想よりも伸びなかったことで米金利の上昇が限定的にとどまり、先週末に発生した、パレスチナのイスラム勢力とイスラエルとの武力衝突をきっかけとするリスクオフムードが金利の低下材料となり、そして、今週に入って米FRB高官からタカ派姿勢の後退を示唆する発言が相次いだことで、足元の金利上昇がピークアウトしていくのではとの見方が強まった格好です。

とはいえ、こうした足元の株価上昇はまだ打診買いの域を出ていないですし、米金利の水準自体もまだ高いところに位置しているため、今後も継続的に上昇していくには、これから本格化する日米の決算シーズンで企業の業績や見通しが強い内容を打ち出すことをはじめ、インフレ基調が順調に落ち着いていくこと、そして、景気の減速も限定的にとどまる「ソフトランディング」シナリオが濃厚となり、然るべきタイミングで米金融政策が利下げに転じる見通しを強めることが必要になってきます。

確かに、現在の株式市場にとって米国の金利低下は買い材料ですが、いざ米国の金融政策が利下げに転じる見込みが立った際に株価が上昇して行けるかどうかは微妙かもしれません。「噂で買って、事実で売る」という相場格言にもあるように、すでに織り込み済みのパターンもあれば、過去の金融政策の転換点を振り返ると、相場の見通しスケジュールに沿った形で、予定調和的に変更されるというよりも、想定以上に景況感が急変したり、突発的な事象が発生するなどがきっかけとなることも多く、利下げの背景次第では相場が大きく下落することも考えられます。

したがって、話を再び相場のテクニカル分析に戻すと、6月に高値をつけた日経平均はその後、3カ月以上にわたって、上値が重たいもみ合いが続きました。それに伴い3カ月間の値動きの中心線とされる75日移動平均線も下向きに転じ、11日(水)時点の株価も75日移動平均線よりも下に位置しています。6月高値までの上昇局面では、株価が75日移動平均線よりもプラス方向に15%以上も乖離するほどの勢いがあっただけに、しばらくのあいだは75日移動平均線を挟んで、「株価が上下に振れるが、方向感は出ない」展開が続くかもしれません。

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