米金融機関の破綻騒ぎは市場のショックにつながるか?
今週の国内株市場ですが、これまでのところ軟調な展開が目立っています。日経平均は週初の13日(月)に節目の28,000円台を割り込む一段安でスタートし、続く14日(火)も続落して下げ幅を拡大させました。翌15日(水)にいったん下落が止まりましたが、前日比でわずかに7円高と、株価の反発の勢いは出ず、16日(木)の取引も27,000円台割れの大幅下落で始まるなど、まだまだ油断できない状況となっています。
こうした株価下落の背景には、先週からの米国株市場が軟調地合いに転じたことが影響していますが、主な要因は2つです。ひとつめは、先週7日(火)に米上院銀行委員会でパウエル米FRB(連邦準備理事会)議長が行った議会証言の内容が予想していたよりもタカ派だったと受け止められ、来週開催予定の米FOMC(連邦公開市場委員会)での利上げ幅拡大の警戒感が再浮上したことです。そして、ふたつめは、足元で米金融機関の銀行事業に対する不安が高まる報道が相次いだことです。
今回問題となった複数の米金融機関は、預金など短期で調達した資金を、長期の米国債や住宅ローン担保証券(MBS)で積極的に運用していましたが、昨年からの急ピッチな米金融引き締めによる金利の上昇(債券価格の下落)などによって、資金繰りが苦しくなり、耐えられなくなった格好です。つまり、金融引き締めの影響が出始めたと言えます。
これにより、米国の金融政策をめぐる思惑について、「インフレ抑制のための引き締め」だけでなく、「金融危機回避のための引き締め緩和」観測が浮上したり、これまでの米金融引き締めによる景気への影響がより警戒されるなどの新たな視点が加わったことになります。
もっとも、米金融機関の破綻に対し、米金融当局が預金の保護など早期対応の打ち出しているほか、今後もこうした金融機関のネガティブな話題が出てくると、今度はリスク回避の動きが強まって債券が買われる(債券価格が上昇する)ことが考えられ、結果的に他の金融機関の助けになるという皮肉な面も持ち合わせています。確かに、欧州大手銀行のクレディスイスの経営不安へと拡大する様相を見せていますが、同行の経営状態については以前より警戒されていましたし、ある程度の混乱は予想されるものの、このまま一気に世界中の市場が連鎖的なパニックに陥る事態は避けられそうという見方が優勢のようです。
とはいえ、今回の米金融機関をめぐる騒ぎが、米景気減速とセットとなった場合には注意が必要です。2月半ばの米NY連銀による「家計債務と信用に関する報告」では、クレジットカードの残高が9,860億ドルに急増し、過去最高を更新したほか、重大な滞納(90日以上の延滞率)が増え始めていることが話題となりました。
これまでの米国景気は好調な消費によってもたらされてきましたが、その遠因となっていた、コロナ禍における給付金の大盤振る舞いの効果が剥落しつつあり、現在は株高などの資産効果が支えている可能性があります。
今後は株式市場の軟調な場面が増えることで、消費が減退し、景況感が急速に悪化することも考えられます。となれば、目先の相場がいったん持ち直したとしても、「その次」にやって来るかもしれない下落局面が想定され、今回の騒ぎがその時計の針の進みを早めてしまったのかもしれません。
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