「日銀サプライズ」で株高は遠のいたか
今週の国内株市場ですが、日経平均は先週末の27,500円水準から21日(水)の取引終了時点で26,000円台の前半まで下落するなど、株価水準を切り下げる展開が目立っています。こうした荒い株価推移のきっかけとなったのが、今週20日(火)に結果が公表された日銀金融政策決定会合です。
その日銀金融政策決定会合の結果を具体的に紐解いていくと、「マイナス金利政策」や「フォーワード・ガイダンス」については維持された一方、YCC(イールド・カーブ・コントロール)における金利変動幅の許容範囲がこれまでのプラスマイナス0.25%からプラスマイナス0.5%に拡大され、月間の長期国債の購入額が7.3兆円から9兆円に増額されるといった内容でした。
日銀の決定を受けての金融市場は、「株安」・「円高」・「債券利回り上昇」という初期反応を見せたわけですが、とりわけYCCにおける許容変動幅の拡大がインパクトをもたらした格好です。
YCCについては、これまで日銀が国債を購入することで半ば強引に金利を抑制してきたこともあり、日銀の国債保有高が高水準に膨らみ、債券市場の機能不全に陥っていたことなどの副作用も指摘されていました。そのため、許容変動幅の拡大という政策の修正を決めたこと自体は想定の範囲内だったと言えますが、これが「日銀サプライズ」となってしまったのは、決定が突然だったことが大きいと思われます。
実際に、最近までの黒田日銀総裁は、金融政策の出口戦略について語ってこなかったほか、許容変動幅の拡大についても、「事実上の利上げとなるため、日本経済にとって好ましくない」と発言していただけに、今回の決定がかなり唐突だったことは否めません。
また、今回の会合後の記者会見において、黒田総裁は「金融引き締めではない」旨を強調していましたが、自身が否定していた許容変動幅を拡大させたことで、市場が「事実上の利上げ」として受け止めたことは、市場との対話が不足していたとも言えます。今後は「日銀はいつ何をしてくるか分からない」というイメージが市場に不安定さをもたらす可能性があることや、次の金融緩和後退を見越した海外勢が折に触れて国債売りを仕掛けてくるなどの動きも警戒されます。
さらに、21日(水)の国内株市場を見渡すと、自動車株のトヨタやホンダが年初来安値を更新し、幅広い銘柄が売られた一方、金融株は買われ、メガバンク株(三菱UFJ、三井住友FG、みずほFG)が年初来高値を更新するなど、金利と為替をキーワードにして、銘柄動向にかなりの温度差があるほか、大きく株価が反発した米国株市場の勢いに乗り切れない面も見せています。
したがって、市場のムードで「買えるもの」を物色する動きが続くあいだは、相場全体として株価が上昇していく展開に移行するには、もうしばらく時間が掛かるかもしれません。
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