国際収支と国際分業の現段階①
何故トランプ政権は軍事力行使を強めているのか
~工業力から金融力へ、中国のプレゼンスの高まり~
【ストラテジーブレティン(399号)】
(1)軍事力行使強めるトランプ政権
トランプ政権が軍事力行使を強めている。その強引な姿勢が、中国やグローバルサウスの反発のみならず、欧州諸国の対米批判と同盟の絆弱体化をもたらしている。この好戦性は、トランプ政権の対中政策が平和共存へとシフトしたことを考えると意外である。第一次トランプ政権の対中政策は、中国共産党体制への批判を強めつつ、圧力を重視する強硬なものであった。しかしエルブリッジ・コルビー国防次官らが中心的役割を果たしているとされる第二次トランプ政権の対中政策は、 中国のアジア覇権を阻止するという大目的を堅持しつつ、全面対決を避けて競争を管理するという現実主義に舵が切られた。実際昨年10月の韓国慶州での米中会談では、トランプ氏は米中をG2と称して、中国を米国とともに世界秩序を担う図抜けた存在であることを始めて認めた。2025NSS(国家安全保障戦略)では対中批判がほぼ消えたことを、多くの専門家が指摘していた。その直後のベネズェラ、イランでの軍事作戦は大変に意外性があった。ベネズェラ作戦はNSSで強調した新モンロー主義で正当化できるとしても、イランは東半球であり、米国が自らの防衛線と認識する周縁圏、外延圏とは到底言えない。空母打撃群2隻を動員しての斬首作戦は多くの人々にとって、受け入れがたいものであっただろう。それに続いて語られているキューバのレジーム転換作戦も軍事力を誇示したものになる。明らかに国際法や国際組織の規範を超え、武力行使に傾斜している。
このトランプ政権の好戦性の高まりの背景には工業力に続き国際金融力においても中国のプレゼンスが急速に高まり、米国はもはや経済外的威力に頼らざるを得ない現実がある。

