波乱含みの9月相場 ~株価の下落は2段階か?~

2022/09/02

月またぎで9月相場入りとなる今週の株式市場ですが、先週末にかけて開催されたジャクソンホール会議(米カンザスシティ連銀主催の経済シンポジウム)においてのパウエル米FRB議長の講演を受けての反応で株価水準を切り下げる展開となっています。日経平均は週初から一段安となり、31日(水)取引終了時点で28,000台の攻防となっているほか、米国株市場でも主要株価指数(NYダウ・NASDAQ・S&P500)が揃って50日移動平均線付近を意識する展開となっています。

実際のパウエルFRB議長の講演内容は、報道などで事前に伝えられていた通り、タカ派色の強いものとなりました。主な内容をピックアップすると、「インフレ抑制を成し遂げるまで(現行の政策)を続けないといけない」、「足元の(物価上昇の)鈍化だけでピークアウトと呼ぶには程遠い」、「9月開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ幅の判断は今後のデータや見通し次第」、「金利上昇による経済への影響が想定され、家計や企業に何らかの痛みをもたらす」、「ある時点で利上げペースを緩めることが適切となる可能性がある」といったものですが、これらの発言自体には特に驚きの内容はなかったと思われます。

ここまで株式市場の反応が大きくなってしまったのは、パウエル議長の講演が当初30分の予定時間に対してわずか8分という短いものだったこともあり、簡潔ゆえに発言の印象が強くなった面もあるかもしれませんが、最近までの株価上昇が物語っているように、それだけ市場が楽観的だったことと、相場の時間軸の修正が行われた可能性があります。

足元の状況は、インフレに対処するために金融政策を引き締めている「逆金融相場」に位置しているわけですが、金融政策についての思惑については、最近までの株価上昇が示していたように、引き締め鈍化観測から、さらにその先にある緩和への転換を期待する動きも一部で見られ、本来であれば景況感の悪化や、業績後退を警戒する「逆業績相場」から、その先にある「金融相場」を先取りしている面がありました。

今回のパウエル議長の講演は、ある時点で利上げペースを緩めることが適切となる可能性はあるものの、それがすなわち金融政策の転換を意味するわけではなく、一足飛びに「金融相場」に向かわないことを市場に認識させることになりました。また、9月のFOMCの利上げ幅は今後のデータ次第ですので、今週末の米8月雇用統計や9月13日に公表予定の米8月CPI(消費者物価指数)など、しばらくは経済指標の動きに敏感に反応する相場地合いとなり、相場の見据える時間軸が短くなることが考えられます。

つまり、講演後に見せた株安の初期反応は、楽観的な金融政策見通しが修正される動きと言え、収束までにあまり時間がかからず、さほど心配しなくても良さそうです。ただし、今回の講演を機に「逆業績相場」への意識が高まることも考えられ、米国の景気や企業業績の悪化の織り込みが始まってしまうと、もう一段階の株価下落が想定されます。

9月は経験則的に株式相場のパフォーマンスが悪い月であることや、株価水準を探っているというタイミングで来週からはレイバーデーの祝日明けで機関投資家が戻ってくること、その週末には国内のメジャーSQが控えていること、そして9月20日~21日のFOMCが控えていることなどを踏まえると、目先の株価が下げ止まったとしても、下値の警戒感が燻り続けることになり、再び相場が強気に戻れるかは微妙かもしれません。

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