日本株の「底打ち」は近いのか?

2022/05/13

大型連休明けとなる今週の国内株市場ですが、これまでのところ日経平均の株価水準は27,000円台に乗せた先週末より一段階切り下げた26,000円の攻防へと移っています。主要3株価指数(NYダウ・NASDAQ・S&P500)が揃って年初来安値を更新する場面があった米国株市場の流れを受けた格好です。

米国株市場では、先週(5月3日~4日)開催された米FOMC(連邦公開市場委員会)後に大きく上昇する初期反応を見せました。次回(6月)の会合で0.75%の利上げに消極的な姿勢を示したことが好感されたわけですが、結局は金融政策の正常化ペースが早いことに変わりがないとして、翌5日の取引に急落へ転じるなど、イベント通過によるアク抜け感が出なかったほか、その後の6日に発表された米4月雇用統計の結果を受けてさらに下方向への意識を強めていきました。

米雇用統計で意識されたのは「賃金インフレ」への警戒感です。平均時給の上昇傾向が続き、労働需給の逼迫が継続していることが確認された結果となりましたが、この状況が続くと、企業が賃上げをしてでも人材確保に動くため、コスト増が製品やサービス価格の上昇につながり、消費者でもある労働者はさらに賃金上昇を求めるというサイクルが生じて、インフレがなかなか解消しないというシナリオが現実味を帯びてくる可能性があります。市場は米金融政策の引き締め自体をかなり織り込んだと考えて良さそうですが、引き締めの影響や、賃金インフレへの動向がある程度見えてくるまでは、不安定な相場が続くかもしれません。

とはいえ、年初来安値を更新した米国株市場に対し、日経平均の株価水準は3月9日につけた直近安値(24,974円)を下回っておらず、現時点の日本株は底堅いと言えます。冒頭に触れた日経平均26,000円は1月と2月につけた安値水準でもあり、26,000円割れは値頃感の買いが入りやすくなっている印象です。また、11日の取引終了時点の日経平均の予想PERは12.42倍で、相場の下値の目安とされる12倍近くになっています。

過去の相場を振り返ると、直近でPERが12倍台を下回ったのは、チャイナショック(2015年8月~2016年2月)やコロナショック(2020年2月~3月)」など、あまりありません。11日時点で計算したPER12倍の日経平均は25,320円ですが、10日の取引でつけた安値(25,773円)は、このPER12倍が意識された可能性があります。今週は国内企業の決算ラッシュですが、全体の企業利益が堅調ならば下値での買いに期待が持てそうです。

このほか、日本株が堅調な理由としては、需給要因(国内企業の決算ラッシュや週末にオプション・ミニ先物SQ)や、原油価格・円安メリットなど「買える」銘柄の存在、そして、一部で「岸田砲」とも呼ばれている、岸田首相がロンドンで先週の5日に行った演説の影響などが考えられます。

「Invest in Kishida(岸田に投資)」と呼びかけた岸田首相の演説では、「新しい資本主義」の4本柱(人材育成、技術革新、スタートアップ、環境・デジタル化)の強化をはじめ、「資産所得倍増プラン」(貯蓄から投資へ、兼業・副業)の推進、新型コロナウイルスの水際対策緩和、原発の再稼働に前向きな姿勢などが語られ、6日の取引では、電力株やインバウンド関連株などが上昇しました。インバウンドについては足元の円安傾向も追い風です。

ただ、目先の物色はまだ限定的であるほか、岸田首相といえば、これまで金融所得課税の税率引き上げ検討など、投資に対してネガティブな印象が強かったこともあり、今回の演説が本格的な「日本買い」の狼煙になったと言い切るにはもう少し様子を見る必要がありそうです。

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