「リスクオフ」中の「リスクオン」

2022/03/18

今週の株式市場ですが、これまでのところ大きく株価を戻す動きが目立っています。3月17日(木)の日経平均は26,000円台を回復してスタートしており、25,000円台割れの場面もあった先週の状況からすると、市場のムードが変化しつつあるようにも感じられます。米国株市場も同様に、NYダウやNASDAQが節目の株価水準を一段階切り上げる値動きを見せています。

高騰していた原油価格が下落に転じたことをきっかけに過度なインフレ警戒が後退したほか、最近までの株価下落の反動や、ウクライナとロシアの停戦交渉への期待、市場寄りと受け止められた中国の経済政策期待などが加わり、さらに、今週注目のイベントだった米FOMC(連邦公開市場委員会)を無難に通過したアク抜け感によって、株価の戻りに勢いが出てきた印象です。

とはいえ、気になるのは、足元の株価反発が「リスクオフ」から「リスクオン」へのシフトなのかどうかです。

先ほどの株価指数で見ていくと、日経平均は昨年の下値ゾーン(27,000円~28,000円)まで距離があるほか、米NASDAQもリスクオフの境界線と思われる14,000p水準をまだ回復できていません。NYダウについては、昨年のサポート(支持)となっていた34,000ドルを3月16日の取引で回復し、一応リスクオフの境界線を超えてきましたが、「リターン・ムーブ」で跳ね返される可能性もまだ残されています。もちろん、株価が25日移動平均線を上抜けするなど、テクニカル分析的にはさらなる上昇余地のサインも増えてきています。

ただし、足元の株価回復が中長期のシナリオを織り込み始めたかについては、まだ微妙なところかもしれません。

ウクライナ情勢が長期化する展開となれば、原材料価格の高止まりが予想されるほか、停戦交渉が進展したとしても、その合意内容によっては、将来に禍根を残すことになるほか、ロシアに対する経済制裁についても「どの時点でどこまで解除するのか?」が変わってくることになります。そもそも、ロシアの軍事行動が戦争犯罪に抵触するのではという視点を国際世論が強めつつあり、停戦後の立場がより危うくなるシナリオが濃厚のプーチン政権としては、簡単に引き下がらないことも考えられます。

また、米FOMCでは、事前の市場予想の通り0.25%の利上げ幅となり、その後の利上げについても段階的に利上げを実施していくことが示され、波乱がなかった一方、今後のQT(金融引き締め)については次回(5月)の会合議論される見込みであることなど、これまでにない早いペースで金融政策が正常化に向かっていること自体に変わりはなく、インフレがなかなか落ち着かなければさらなる引き締めの加速も考えられるため、景気への影響に対する懸念は今後も燻り続けると思われます。

そのため、足元の株式市場の動きは「リスクオフ」の最中での「リスクオン」動きの可能性があり、まだ相場に一波乱あるかもしれないことには注意しておく必要がありそうです。

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