岸田政権の経済政策で日本株は浮上できるか?

2021/11/19

今週の国内株市場ですが、これまでのところ、強いのか弱いのか「掴みどころ」のない展開が続いています。17日(水)の日経平均は29,688円で取引を終えていますが、前の日の16日(火)の取引時間中には29,960円をつけ、3万円の大台が目前に迫る場面を見せた一方、18日(木)には29,500円あたりを意識するスタートになるなど、株価水準自体は堅調さを保っているものの、いまいち先高観が盛り上がらない印象です。

日米の企業決算シーズンは一巡しましたが、景況感や年末相場への期待などによって、上方向の意識はまだ保たれてはいますが、12月に向け、米クリスマス商戦の初動や、米債務上限問題の再燃、中国恒大集団の大規模な利払いといったイベントを無難に通過できるか次第の面もあり、しばらくもみ合いが続くか、それともイベント前に「一花咲かせる」動きが出てくるのかが焦点になります。

それまでに、日経平均もひとまず節目の3万円台乗せを達成したいところではあるのですが、そのきっかけとして、今週末19日(金)に発表が予定されている岸田政権の経済政策の中身が注目されます。

あわせて40兆円を超えると見込まれていることもあって、規模のインパクトだけで株式市場が反応し、日経平均が3万円台をクリアする可能性もありますが、今後も相場に方向性をもたらすかは、打ち出された政策のそれぞれについて、「果たして今の日本に本当に必要な政策なのか?」、「その政策が一時的なものではなく、継続的に効果を与えるものなのか?」といった、正当性と効果が問われることになります。

「新しい資本主義」、「分配と成長の好循環」を掲げる岸田政権ですが、政権発足からこれまでの動向を見てみると、いわゆる10万円のこども給付金の支給対象やガソリン補助金などを決定する経緯や、来年以降に金融所得課税の強化を本格的に議論する方向で調整に入ったことなど、報じられている内容を見る限り、内容の根拠やねらい、財源をどうするかといった説明に不明確なことが多く、きちんと議論がなされていない印象があります。

例えば、金融所得課税については、「投資をする人は富裕層」という単純な考え方で検討を進めているようにも感じられます。米国でも富裕層への課税に対して議論が行われていますが、一定期間に相応の稼ぎを得た人が課税対象という案になっています。日本ではどのような形式になるかは分かりませんが、現時点では、「投資で得た利益に対しての税率を一律で引き上げる」といった流れで話が進められてしまうイメージで受け止められているように思えます。また、配当金の二重課税問題など、議論されるべき課題についても対応するのかは不明です。

「表面的な平等」と「本来の公平さ」が議論の方向性として整理できないまま、結局、政策の内容が格差是正を理由に規模ありきのバラマキ、そして、来年夏の参議院選挙を見据えた特定分野へのバラマキが中心となった場合には、資金がつぎ込まれる業種や銘柄には物色が向かうと思われますが、日本株全体では成長期待につながらず、マイナス材料となってしまうことには注意が必要かもしれません。

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