出遅れ修正の「買い戻し」と「買い上がり」

2021/06/04

今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ、29,000円台からの上値が重たい展開が続いています。先週末528日の高値(29,194)や75日移動平均線を上抜けできれば、再び3万円台を目指す展開も想定されますが、今週末に控えている月初恒例の米雇用統計の結果待ちや、来週末のメジャーSQへの思惑もあって、方向感が出にくい印象です。

新型コロナウイルスをめぐる状況については、国内でもワクチン接種の進展が報じられているように、経済・生活の正常化期待を背景に日本株の出遅れ修正の動きとなっていますが、75日移動平均線をはさんで、出遅れ修正の「買い戻し」から「買い上がり」の分かれ目となっているのかもしれません。62日時点で日経平均は75日移動平均線を超えられず、TOPIXは同線を超えようとしています。日足チャートで見る限り、日経平均よりもTOPIXの方がやや強い状況と言えます。

また、出遅れ修正という視点では、日本株の割安度がイメージされます。そこで、PER(株価収益倍率)で割安度を確認してみると、62日時点の予想PERは日経平均で14.12倍、TOPIXの対象となる東証1部全体では16.27倍となっており、実は上値が重たい日経平均のPERの方が割安であるように見えます。普通に考えれば、「日経平均の上値余地がまだまだあるのでは?」となるのですが、実は、日経平均のPERが低く見えていること自体に注意する必要があります。

というのも、日経平均の指数寄与度の高いソフトバンクグループの利益が反映されているからです。512日に発表した20213月期決算では、純利益が49879億円となり、国内企業の純利益で最大を記録しました。

問題なのは、同社が投資企業の性格を強めている点です。利益のほとんどはファンドなどの投資先の含み益で、株高の恩恵を受けた格好です。さらに、前年度(203月期)は過去最大の赤字だったことを踏まえると、同社の収益の振れ幅が大きいことが分かります。相場の動き次第でもっと稼げるかもしれませんし、大きく利益が減ってしまうことも有り得ます。

予想PERは、企業が発表する予想に基づいて計算されますが、ソフトバンクグループは業績予想を開示していません。日経平均を算出している日本経済新聞社の媒体(日経会社情報DIGITAL)では、ソフトバンクグループの今期の利益予想を4.5兆円としているため、この利益予想額で日経平均を計算していると思われます。

したがって、今の日経平均が割安かどうかはPERで見た限りでは微妙で、TOPIXPERの方を参考にした方が良さそうです。

もっとも、ワクチン接種の普及に伴い、世界経済の回復基調が強まっていくシナリオがメインであれば、企業業績の上方修正も期待でき、株価水準も切り上がっていくことが予想されます。その一方で、物価上昇による米長期金利上昇や、経済への悪影響、リスクマネーの行き先となっているビットコインなどの仮想通貨市場の乱高下など、思わぬ調整局面の到来にも備えておく必要もありそうです。

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