米FOMC後に見せた株高の持続性

2021/03/19

米FOMC(米連邦公開市場委員会)や日銀金融政策決定会合といった、金融政策イベントにらみとなった今週の株式市場ですが、米FOMCを通過した米国株市場が上昇し、NYダウが史上最高値を更新して初の33,000ドル台に乗せたほか、18日(木)の日経平均も節目の3万円台に乗せてスタートしています。
そのFOMCの内容を見ると、市場が予想していた以上に「ハト派寄り」の内容だったことが好感されたようです。今回のFOMCで注目されていたのは、FOMCメンバーによる経済見通し分布を示した、いわゆる「ドット・チャート」の状況と、FOMC後に開かれる記者会見でのパウエルFRB議長の見解の2点です。
ドット・チャートでは、2021年の実質GDPの成長率の予想中央値は6.5%と、昨年12月時点の予想(4.2%増)から大幅に上方修正されたほか、利上げのタイミングについても、多くのメンバーが23年までゼロ金利を維持する見通しとなりました。また、パウエルFRB議長の記者会見では、雇用と物価上昇率の目標が達成されるまで現在の緩和的な金融政策を維持する旨を述べており、「経済の回復・正常化と金融緩和がしばらく両立していく」という安心感が株高につながったようです。
FOMCを受けた株式市場はひとまず上昇という初期反応を見せたわけですが、とはいえ、2月末に市場を揺るがせた、米長期金利上昇への警戒が払拭されたわけではなさそうです。実際に、FOMC後の米債券市場は、短期債(2年・5年)の利回りが低下する一方で、20年債などの長期債の利回りは上昇していますし、先ほどのドット・チャートでも、2021年の物価上昇率見通しの中央値が前回の1.8%から2.4%へと引き上げられています。
もっとも、足元の物価上昇のペースアップは、コロナ禍による反動による面もあり、「一時的なもので、しばらくすれば落ち着く」という見方もあります。ただ、かつてない規模の金融緩和と経済政策によって景気が過熱し、想定している以上の物価と金利上昇によって、FRBが金融引き締めに動かざるを得なくなる状況に陥る懸念は燻っています。
先日、米議会で可決した追加経済政策は約1.9兆ドルと大規模なものですが、本来、こうした財政出動の経済政策は、景気サイクルの乱れや、コロナ禍といった突発的な事象によって生じる需要と供給の差を埋めるという目的があります。直近の米国実質GDPの金額は、すでにコロナ危機前を取り戻しつつあるため、今回の追加経済政策の規模が過大となる可能性があります。
米FRBの金融政策スタンスの背景にあるのは、「日本や欧州のようなデフレは避けたい」、「そのために、ある程度のインフレにさせたい」の2点ですが、「でも、急激な物価上昇や金利上昇は困るし、バブルの過熱も抑制させたい」というホンネが見え隠れしている状況と言えます。
こうしたFRBのホンネが顕在化するまでは、株式市場は上方向を目指す展開が続きそうです。

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