米金利上昇の不安を超えるのに意識しておきたいハードル

2021/03/12

今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ、29,000円台に乗せての推移となり、週末のメジャーSQや、来週の米FOMC、日銀金融政策決定会合などを控え、不安定ながらも、先週からの株価急落がいったん落ち着きを見せています。
先月末に株式市場を揺るがせた米長期金利(米10年債利回り)上昇に対する警戒の余波は燻ってはいるものの、新型コロナウイルスワクチンの接種進展をはじめ、経済指標や企業業績の改善、そして、成立に向かっている米追加経済対策への期待感などがその警戒を覆っている相場の構図となり、成長株と割安株とのあいだで資金が流れている状況です。
このまま、米金利上昇への不安は収束に向かって行きそうなムードになっていますが、いくつか越えるべきハードルが残されています。
まずは、「プラスαの悪材料」が出て来ないことです。足元の米10年債利回りは、昨年の夏場頃から継続的に1%ほど上昇していくトレンドを描いていますが、過去に遡ると、2017年終盤から2018年10月にかけての期間も同様に、1%ほど上昇トレンドとなっていた局面がありました。
当時は、金利上昇による警戒感で株価が伸び悩み、下落に転じましたが、さらにプラスαの悪材料が加わって下げのピッチが加速していきました。結果的に、日経平均は2018年10月2日の高値(24,448円)から12月26日の安値(18,948円)まで5,000円以上下落していきました。
ちなみに、そのプラスαの悪材料とは、米中対立への懸念です。足元も中国で全人代(全国人民代表大会)が開催されていますが、そこで議論されるテーマの中に香港の選挙制度の見直しがあります。今年秋の立法会選挙や来年の行政長官選挙が予定されている中で、民主派を徹底排除しようとする動きの表れと受け止められており、今後の米中対立の火種となる可能性があります。
次に、現在の株価が「超金融緩和」と「超経済政策」によって支えられている面が大きいということです。金融緩和による流動性相場という点については、これまでにも多くの方が指摘している通り、「出口戦略の議論が出た時には株価は大きく下落する」という見通しがある一方で、「しばらくは引き締めに動かないだろう」という見方がそれを抑え込んでいます。実際に、米FRBなどの金融当局も低金利を続ける姿勢を示していて、「経済回復と金融緩和の両立」によって株価がさらに上昇していくというのが相場の主流となっています。
ただし、追加の経済政策もこれまでにない規模で行われています。現在、可決に向かっている米追加経済政策の目玉は個人への給付金です。条件が付けられていますが、一人あたり1,400ドルが支給されます。この給付金については、コロナの緊張が高まった昨年3月に1,200ドル、そして、12月にも600ドルが支給されており、これに失業給付金も加えると、かなりの大盤振る舞いです。
つまり、金融緩和・経済政策が大規模であるがゆえに、制御不能となる可能性があるわけです。これにより、思ったよりも景気が過熱して、金融当局が引き締めに動かざるを得なくなるという懸念が今後も燻り続けることになります。そのため、「経済回復と金融緩和の両立」自体が今すぐ崩れるというわけではありませんが、強い景気回復が、金融引き締めへの意識につながりやすくなると思われ、今後の株価上昇幅がこれまでとは異なり、抑制気味になっていくと考えられます。

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