米「ゲームストップ」の乱気流が残したもの

2021/02/05

2月相場入りとなった今週の国内株市場ですが、3日(水)の日経平均終値は28,646円まで上昇し、28,000円台割れとなった先週末の下落分を取り戻した格好です。
日米ともに「下げ切らない強さ」を幾度となく発揮してきたこれまでの相場は、先週末になってまとまった下げを久々に見せたわけですが、そのきっかけとなったのは、新型コロナウイルスでも企業決算でもなく、米個人投資家による一部の投機的な取引と、それに伴う状況でした。
「ゲームストップの乱」とも呼ばれるこの動きは、米個人投資家がSNSなどを通じて連携し、ゲームストップ株をはじめとする空売り残高の多い銘柄に集団で買いを仕掛け、空売り残高を積み上げていたヘッジファンドに損失を発生させて圧力をかけたというものです。実際に、ターゲットとなった銘柄の株価が急上昇し、ヘッジファンドが損失を抱え、買い戻しや追加担保の確保に迫られる事態となりました。
こうした事態は、一部の銘柄による局所的な動きであり、「相場への影響は一時的」という見方が多く、実際に、日経平均やNYダウなどは値を戻しているほか、ゲームストップの株価も落ち着きつつあります。また、米国の相場の視点も、ゲームストップからバイデン政権による追加経済政策へと向かいつつあり、相変わらずの「いいところ取り」の顔を覗かせています。
その一方で、さまざまな論点や問題、課題も浮き彫りになっています。具体的には、個人集団がファンド勢に打ち勝ったという事例が発生したことで、市場のバランス・オブ・パワーに変化が生じ、これまでの投資手法が見直される可能性があることや、そもそも今回の個人投資家の行動が法令違反にあたるのか、そして、個人の大量の注文によって証券会社の取引システムの障害が相次いで発生したことによる機会損失や、個人投資家に対してネット証券が取引制限を実施する一方で、ファンド勢は通常通り取引できたことによる不公平感などです。
他にも、損失を抱えたヘッジファンドが資金を確保するために他の銘柄を売却するなど、他の銘柄にも影響が出たほか、投機的な値動きを敬遠する投資家の株式市場離れ、こうした事態を生み出す遠因となった金融緩和自体に対する批判、今回の事象を契機に新たな取引規制が設けられる事態なども考えられ、その動向次第では思ったよりも影響が長引く可能性があります。
目先の株価は反発傾向にありますが、今回の投機的な売買による混乱の記憶と株高の警戒感が結び付きやすくなり、積極的に上値を追うというよりは、銘柄の選別がさらに進む展開になることが考えられ、しばらくは神経質な値動きを意識しておく必要がありそうです。

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