早期に落ち着いた日本株が目指す「上値のハードル」

2020/09/04

「月跨ぎ」となった今週の国内株市場ですが、これまでのところ日経平均は23,000円台をキープする展開となっています。先週末は安倍首相辞任の一報を受けてざわついた場面がありましたが、比較的早い段階で落ち着きを取り戻したと言えます。

3日(木)の取引開始時点でようやく23,500円台に乗せてきましたが、米国株市場ではS&P500やNASDAQが史上最高値を更新しています。一応、東証マザーズ指数は年初来高値を更新してはいるものの、いまいち米国株高の流れに乗り切れていない面もあります。

そのため、足元の日経平均がさらに上値をトライしていくには、いくつかの越えるべき「ハードル」がありそうです。

そのひとつとして挙げられるのが、米国株高の基調継続です。8月に入ってからの米国株は、企業決算の通過や、抗コロナウイルスのワクチン開発や治療法認可への期待、そして先週開催された「ジャクソンホール会議(米カンザスシティ連銀主催の経済シンポジウム)」で、パウエルFRB議長が基調講演で、インフレ率が2%を上回ることを一時的に容認する「平均インフレ目標」を打ち出し、ゼロ金利政策の長期化観測が強まったことなどを背景に株価の上昇が加速してきました。

とはいえ、株価上昇による過熱感や実体経済と株価水準とのギャップがあり、近いうちに調整局面がやって来ることも想定されます。とりわけ、ティックトック(TicTok)の米国事業売却交渉期限(9月15日)をはじめ、米FOMC(15日~16日)や1回目の米大統領候補討論会(29日)など、9月中盤以降の米国は注目のイベントが控えており、こうしたイベントが売りのきっかけになる可能性があります。

また、国内政治の動向もハードルとして挙げられます。14日に自民党の両院総会で総裁選が行われますが、そこで次期自民党総裁が選ばれて首相指名を受けることになります。現時点では多くの派閥から応援を受けた菅官房長官が優勢とされていますが、菅氏は安倍政権の中枢に長く関わっていたこともあり、市場の初期反応は安心感を持っている印象です。

とはいえ、候補者絞り込みまでの経緯がオープンではないことが、後になって足枷になってしまうかもしれない点には留意する必要があります。前回(2007年9月)の安倍首相が辞任した時も、多くの派閥から支持された福田康夫氏が次の首相に選ばれましたが、組閣の際に閣僚のほとんどが前安倍内閣からの再任・横滑りとなったことで、新内閣への期待値はあまり盛り上がらず、スタート時から批判的な声も上がっていました。

もっとも、現在はコロナ対応など国難とも言える状況下であるほか、打ち出す政策の内容によっては新政権への期待値が高くなると思われます。ただし、今回のオープンでない決定プロセスによって、派閥の影響力が透けて見える論功行賞的な人事や、衆議院の残り任期が約1年となる中での「つなぎ内閣」といったイメージが色濃くなる懸念が出てくる可能性もあります。日程的に厳しくても自民党の党員投票を行い、透明性を高めた方が結果的に国民からの支持を集め、今後の政権運営がスムーズに進められたかもしれません。

国内外の状況を見ると、9月半ば以降の相場動向には警戒が必要になると言えそうです。

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