後にジワリと効いてくる?中国全人代にみる経済政策と成長率目標
今週の国内株市場ですが、日経平均は週初の4日(月)に、いわゆる「窓」空けによって株価水準を一段切り上げ、21,700円台に乗せました。これにより、昨年10月2日高値(2万4,448円)と、12月26日安値(1万8,948円)の下げ幅の「半値戻し」である21,698円を超えたわけですが、以降はやや売りが優勢で、窓を埋める展開となっています。
そんな中、中国では全人代(全国人民代表大会)が5日(火)から始まりました。日本でも、開幕の演説で壇上に立つ李克強首相の映像がニュースなどで報じられましたが、汗をダラダラ垂らしながら話をする同氏の姿が印象的でした。
この演説は「政治活動報告」と呼ばれていて、前年の回顧からはじまり、財政や社会保障、軍事、環境など、多岐の分野にわたって今年の方針が示されます。その中でも注目されるのが、経済成長率目標や経済政策の方針なのですが、今年の経済成長率の目標は6.0~6.5%と発表されました。前年の6.5%からはわずかに引き下げられた格好です。
これを受けた国内外の株式市場の反応は今のところ限定的にとどまっています。中国の経済減速や米中摩擦などが燻る現状においては、成長率目標の引き下げを予想するのは容易ですし、中国当局も経済政策を矢継ぎ早に打ち出しています。
実際に政治活動報告の演説でも、緩和と引き締めのバランスをとった金融政策をはじめ、大規模減税やインフラ投資の強化など、景気刺激策について触れています。さらに、知的財産権の保護強化・罰則規定を盛り込んだ「外商投資法」についてアピールしたことや、昨年の演説内で繰り返されていた「中国製造2025」のキーワードを使わないなど、米国への配慮も窺えます。
結果的に金融市場に対して大きな波乱を与えなかったように見えますが、実は、経済成長率目標のわずかな引き下げは大きな意味を持っているので注意が必要です。前年の成長率目標は、「目先の成長を追うよりも、課題となっている債務問題や国営企業改革などを優先させよう」というのが前提で6.5%に抑えられたものでした。ただ今年の目標の背後にあるのは、目先の経済減速が加速しないように経済刺激策を打ち出したことが前提です。
つまり、債務問題が拡大するリスクを抱えながら設定した経済成長率目標が引き下げられているわけです。すでに中国は経済成長率よりも債務増加率の方が大きくなっていて、景気を支えるコストが増えている状況ですので、打ち出した経済政策があまり効果を発揮しない展開もありえます。足元では落ち着いていますが、後々になってネガティブ材料として効いてくる場面が訪れる可能性があることには注意しておいた方が良いかもしれません。
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