円高は再び株価を押し下げるか。想定為替レートの変更事例から中間決算を読む。
<要約>
日経平均が1万7,000円を本格的に回復できない状態が続いている。円高による今後の業績下方修正を市場は警戒しているようだが、試算によると7%程度の下方修正は織り込み済みで、実際に下方修正となっても市場に大きなショックを与えることはないだろう。ただし、想定を超える大幅な下方修正や外部要因リスクが顕在化した場合は1万6,000円割れとなる可能性がある。
■アベノミクス以降、始めての現象
10月下旬から3月決算企業の中間決算が発表される。輸出企業を中心に円高による業績圧迫が危惧される中、円高の影響を株式市場がどの程度織り込んだか日経平均のPER(株価収益率)から考える。
PERとは株価が利益の何倍まで買われているかを示す指標で、この値が高いほど株価は割高、低いほど割安となる。図1は日経平均株価とPERの関係を示しており、緑色の雲のような部分がPER14倍~16倍に相当する。図1のように日経平均は通常PER14倍~16倍で推移することが多く、市場が強気(先行きに楽観的)なときは16倍程度まで上昇する一方、市場が弱気(先行きに悲観的)なときは14倍程度まで下がることを繰り返してきた。
15年8月のチャイナショック、16年初頭の世界経済減速懸念など、悪いニュースが出るたびに株価は大きく下落したが、いずれの場合もPER14倍程度まで下がると割安とみなされ、株価は速やかに反転した(図1オレンジ色の丸囲み)。ところが、今年6月の英国の国民投票でEU離脱が賛成多数となると、予想外の結果からPER13倍程度まで一時的に下がり、その後切り返したものの、7月下旬から14倍程度で張り付いたままだ。2ヶ月以上もPERが14倍程度で足踏みするのはアベノミクス始まって以降、初めての現象である。