中国の爆投資が引き起こすハイテクブーム、受益者は日本
【ストラテジーブレティン(188号)】
世界覇権に挑戦する中国、自転車操業投資の継続が必須
5年に一度の党大会が終わり、習近平率いる中国は世界覇権を奪取する野望を隠さなくなった。過去10年の名目成長率(中国9%、米国4%)が続けば、2026年には経済規模において米中逆転が起き、習近平の戦略目標の第一歩がまず達成される。
しかし貿易黒字が急減する中で、GDPの5割を投資に依存する中国が成長を続けるには屋上屋を重ねても投資を増加させ続けるしかない。成長が止まれば不良債権問題が一気に噴出し、経済と体制の危機を招くことは必至である。走っている自転車はこぎ続けるしかない。不動産投資も重厚長大産業の設備投資ももはや息切れ、今は財政によるインフラ投資による片肺飛行が続く。
ブレイクスルーをハイテクの爆投資で
突破口は技術革新が急進展するハイテク分野での爆投資で世界シェアを席巻することである。半導体・液晶などのハイテクは、収穫逓増(規模の経済)が最も働く分野なので、金に糸目をつけない投資を続ければ必ず勝てる。米国が日本に負けたのも、日本が韓国・台湾に負けたのも究極の原因はそれである。ハイテク爆投資は中国にとって一石二鳥である。新たに莫大な投資需要を創造し、返す刀で世界シェアをもぎ取る。2000年世界シェア10%であった中国の粗鋼生産は10年後に5割に達し世界市場を支配したが、規模の経済がより働くハイテクはもっと容易にシェア奪取が可能である。
とはいえ半導体・液晶では今の中国にとって器は小さすぎる。EV用バッテリー、ロボット、AI、FA、「中国製造2025」に掲げられた全ハイテク分野で爆投資が始まっている。中国が仕掛ける投資が引き金になり、各国、各企業が投資競争の波にのまれつつある。これは日本にとってチャンスである。