シンバイオ製薬株式会社(4582 GROWTH)
BCVのグローバル開発が本格化
フォローアップレポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯
造血幹細胞移植後AdV感染症 PhaseⅢの本格化
造血幹細胞移植後のAdV感染症は、承認された抗ウイルス薬がなく、小児に多く発症し、致死率が高い、非常にUnmet Medical Needsの高い分野である。現在は、シドフォビル(CDV)が使用されているが、腎機能障害や骨髄抑制の副作用があり、一刻も早く、副作用の少ないブリンシドホビル(BCV)の承認が望まれている。シンバイオは、PhaseⅡa試験の成功を承けて、2025年6月30日、欧州EMAに対しPhaseⅢの試験申請(CTA)を行った。PhaseⅢ試験のデザインは、2群(対象群はシドフォビルCDV投与)で行われ、主要評価項目は、治療期間4週間後の血中でのウイルス不検出(連続2回)となっている。また、副次的評価項目のなかに、複数の臨床的な複合エンドポイント(臨床症状の改善をなど)を設定しており、米国FDAの要求にも対応したデザインとなっている。米国での2026年試験開始を目指し、米国FDAとも協議を進めているところである。折しも、2025年12月、シンバイオはグローバル開発体制強化のため、組織刷新を行った。グローバルな研究開発体制が強化され、事業価値が向上していくことを期待したい。
AdV感染症の次は、悪性脳腫瘍もしくは頭頸部がん
悪性脳腫瘍(GBM)は進行が早く予後が悪い難治性がんである。およそ半数の患者は、標準療法で用いられるテモゾロミドに対し耐性を示している。シンバイオでは、標準治療に抵抗性のある難治性GBMに対する、BCVを用いた新たな治療法の開発を目指している。2025年には、BCVの有効性を高めるためのバイオマーカーの発見、また様々なモデルマウスでBCV単剤での腫瘍の増殖抑制効果や生存延長効果という強い抗ガン活性、BCVと標準治療との併用により、これらの効果が顕著に増強されることが確認された。さらに、腫瘍内のBCVとその活性化体であるCDV-PPも検出され、臨床試験開始に向けた有用な知見が得られている。頭頸部がんは、腫瘍微小環境の免疫抑制性が高く、免疫チェックポイント阻害剤の奏効率が高くない。現在の標準療法(免疫チェックポイント阻害剤とシスプラチンの併用)は、シスプラチンの副作用から、頭頸部がん患者に多い高齢者には適応しづらい。しかし、10月のESMOにて、免疫チェックポイント阻害剤とBCVの併用療法は、安全性が高く、標準療法と同程度の効果が期待できることが示された。また、自己免疫疾患で免疫チェックポイント阻害剤が使いづらい患者にはBCV単剤療法が奏効する可能性も示唆された。今後の開発計画は未定であるが、免疫チェックポイント阻害剤との併用を軸としたグローバルなパートナリングの可能性を想起させるものであり、有力なパイプラインとして浮上してくると見込まれる。
PML(指定難病)を対象に米国NIHと契約締結の見込み
PML(進行性多巣性白質脳症)は進行が早く致死性の高い指定難病である。原因ウイルスは、 JCウイルス(ポリオーマウイルスの1種)である。 BCVは、現在優れた治療薬が存在しないポリオーマウイルス感染症(腎移植後のBKウイルス腎症、やPML等)の有力な治療薬となる可能性が既にペンシルベニア州立大学との共同研究で示唆されていたが、この成果に米国国立衛生研究所(NIH)が非常に高い関心を持っており、今後、NIHと契約を締結し、まもなくPOC確立のための臨床試験が開始予定である。このように、承認された抗ウイルス薬がなく、非常にUnmet Medical Needsの高い分野で奏効が示唆されているBCVの開発は非常に意義が高いことは論を待たない。グロ-バル開発体制の強化により、パートナリングによる資金確保と開発の加速化が図られることを期待したい。
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