稼ぐ経営者を分身へ
・日経平均は昨年10月に5万円を超えた。36年ぶりに過去のピークを更新した後、トランプショックで4月に急落したが、その後順調に戻してきた。トランプ関税、米中貿易摩擦、ロシアやイスラエルによる紛争などに振り回されながら、マーケットはAIをテーマに新成長領域の拡大に期待を高めている。
・トランプ流の脅し戦術には、引き続きどのように向き合っていくのか。大胆で一方的な戦術で脅しをかけ、相手の譲歩を引き出そうと画策する。しかし、それが自国の経済に悪影響が出るかもしれないと、株式市場が身構えるとサッと引いて、次の手を打ってくる。君子豹変、朝令暮改ともみられるが、そもそも脅し戦術なので、あの手この手と奇策を打ち出してくる。
・これにどう立ち向かうか。単なる脅しではない点が厄介である。常に貢物やお土産を求めてくる。長い目では弊害があるにしても、とりあえず自らの手柄になって、選挙民からの支持につながるのであれば、それでよしとする。
・マーケットとは本気で対峙しないので、株式市場への懸念は杞憂に留まると楽観してよいのであろうか。関税引き上げはインフレを助長して、米国内景気にマイナスである。しかし、関税分を減税に用いて、金利を引き下げれば、景気は保つことができると読んでいる。
・トランプ政策の歪みがうまくカバーされずに、楽観論が先行すると、期待はずれの動きが表面化した時、第2のトランプショックが起きそうである。
・トランプ大統領は、米国力の低下を抑えようとしている。社会の格差、分断が深まる中で、自らを支持する中間層の社会的、経済的な地位低下を改善しようとしている。方針は明確である。
・米国は新しい産業の興隆で世界をリードしている。AIはブームであるが、本物であり、経済社会に大きな変革をもたらそう。世界的な企業も続々と育っている。
・一方で、伝統的産業は凋落しており、そこで働く人々は苦難に直面している。産業の栄枯盛衰というのはそういうものであり、自由でグローバルな競争はこれを是認してきた。しかし、米国ファーストはそれに待ったをかけている。
・大統領権限により、一方的な政策が次々と発動されている。そんなことが勝手にできるのかと思いつつも、トランプ氏はひたすら実行に移している。中国への圧力、経済政策への圧力、反対派の弾圧、人事への介入、情報統制、ワンマンとしての強権政治など、まるで途上国の君主のようである。
・これに対して、1)内からも外からも楯突かないようにしよう、2)自分だけ自社だけ自国だけはうまくとりもってもらおう、3)そのためのお土産、貢物を用意しよう、という動きも活発である。
・これは1つの戦術としてありえよう。違法にならないように、社会的批判をあびないように、うまく立ち回る必要はあろう。しかし、そのような行動をとって、トランプ流に慣れて、TACO理論(Trump Always Chickens Out(トランプはいつも尻込みして退く)」の頭文字)に従っているだけでよいのだろうか。
・そうはいかない。トランプの流儀には一目おきながらも、時代を見据えて、一歩先をみておく必要がある。ポストトランプ、中国の台湾進攻への対応は用意周到でありたい。
・昨年9月の上海協力機構(SCO)の天津宣言をみると、これはどこの国かと思う。2025年は第2次世界大戦勝利と国連創立から80周年、国連は唯一無二の政府間組織で、民主的で公正な多極的世界の構築に向けて、その調整力を高めるべきであると、中国が謳っている。
・地域紛争を軍事侵略として批判し、NPT(核拡散防止条約)を促進し、AIテクノロジーのリスクを防ぐという。まさに、中国が米国にとって代わって、世界の大義を担うと言っている。これも危うい。中南米、アフリカでは、経済発展を確保するために、米国よりも中国に頼り、中国側に付く国が増えている。中国はそれを狙っている。
・日本はどうするのか。日本企業は、どのように行動するのか。米国との協調は強固なものにしながら、自立と分散、多極化を進めていく必要がある。何よりも、経済力、防衛力、文化力を高めて、一目おかれる存在として実力を養っていくことが求められる。
・トランプ政権は、サステナビリティ、ESGへの揺り戻しを進めている。自らの競争力を高めるべく、行き過ぎたDEI、ESGに対して、反対の方針を打ち出している。エネルギー、インフラ、洋上風力、電気自動車(EV)、人材の多様性、脱炭素などに、企業はどのように向かうのか。同調する動き、沈黙する動き、形を変える動きなども活発である。
・日本企業はあるべき姿としてのサステナビリティを問いつつ、自らの企業の競争力向上に役立ち、価値創造に結び付くかどうかを突き詰めながら、具体的な方針を見直していってほしい。形だけの追随では意味がない。
・金融面では、暗号資産の行方に注目したい。暗号資産は証券か、通貨に連動するステーブル・コインか、コモディティ(商品)か。役割や立場によって意味付けが異なる。収益獲得を目指す投資対象なのか、資金決済手段なのか。先物商品になるのか。単なる投機対象なのか。
・規制次第で発展のスピードが定まろう。ドル基軸通貨への対抗となるのか。新しい金融商品として大発展するのか。トランプ政権はより自由な発展を後押しすることになろう。日本でも暗号資産の活用をリードする施策が求められており、実際動き出そう。
・リスクをチャンスにかえるには、1)メガトレンドを読んでリードする企業経営者を見出すこと、2)その企業の株主になって、事業の実態を知り、戦略をフォローしていくこと、3)こういう企業を10社ほどみつけて、自らの投資の探索先行企業にしていくことを勧めたい。
・そして、信頼できる経営者、尊敬できる経営者、凄いと思う経営者を自らの分身にしていきたい。そうすれば、トランプ時代の乱気流を乗り越えることができよう。

