日銀思想の敗北は鮮明
脱デフレ・円安・株高が見えている
【ストラテジーブレティン(69号)】
明白になった論理上の分水嶺
市場は論理で動く。「より整合的論理だけが、投資の成功をもたらす」は武者リサーチが墨守する信念であるが、それが今ほど当てはまる時はめったにない。今論理に基づいて、株高・円安の長期トレンドへの転換点である、と主張したい。
論理は単純明快である。米国経済のデフレ回避が成功したことにより、以下の連鎖が作動する。
① 米国経済は日本が陥ったデフレを回避し、成長軌道に入った。
② 米国の経済回復、デフレ回避を決定づけたのはFRBの創造的金融政策(QE)である。
③ それは日銀の「デフレは日銀のせいではない、日銀はあらゆる手を尽くしている」という主張の誤りを白日にさらした。
④ 日銀は自発的にせよ、受動的にせよ、従来の理論と政策を大転換せざるを得ない。
⑤ 日銀が「対デフレ=対円高=対株安」の戦いの先頭に立つことが確実になった以上、「日本の円高・デフレ・株安」は終わる。
誤った悲観的米国経済像を批判する
米国経済の回復、その中長期展開力、驚くべき適切な政策選択が全ての鍵であり、私はそれに強い信頼を持っている。如何に多くの「専門家」が誤った米国経済像を垂れ流し、人々に不要な悲観の種を植え付けてきたか、その詳しい分析は近日中に発行する投資ストラテジーの焦点294号「新たな発展段階入りが見えてきた米国経済 ~世界随一の米国経済の中長期展開力~」を参照されたい。
日銀思想の敗北は決定的、政策転換の軌道は敷かれている
米国経済が復活したとすると、次の焦点は日銀が変わるかどうかだが、未だ否定的論者が多い。それら否定論は、結局「デフレは日銀のせいではない、日銀はあらゆる手を尽くしている」というこれまでの日銀思想を肯定することになる。それは事実に対して謙虚な姿勢とは言えない。西村清彦日銀副総裁は「経済学の教科書にはない新しいことをやっていく。金融論が新たにつくられる時代だ」と述べ、米国に倣って創造的な未来志向の金融政策を志向していくと言明している。日銀内にもアメリカの成功に学ぶべきだとの議論が高まっていることと推察される。
不誠実な白川氏、自己弁護は許容されない
白川日銀総裁の4月18日のニューヨークでのスピーチで「金融環境は日本は先進国で最も緩和的にもかかわらず、デフレから脱却しない最大の理由は成長率が徐々に低下していることだ、中央銀行らは出来ない課題も明確に認識する必要がある。遂行できない政策は構造政策だ」と述べたと伝えられる(4月20日読売新聞)。言葉は悪いがまるで負け犬の遠吠えのような主張であり、多くの批判の下でその姿勢を貫くことは不可能であろう。米国の金融政策成功に対する真摯な認識、日本の現状に対する責任感が欠如している、と言わざるを得ない。政治家、投資家、企業経営者など現実に責任を負っている人々は、そうした自己弁護姿勢を受け入れないだろう。
また市場もその先を読みに行くだろう。