「日衰・中隆から日隆・中衰へ」の必然性の分析 ②
~日本経済、バブル崩壊からの復活と中国への教訓~
【ストラテジーブレティン(357号)】
清華大学「産業発展と環境ガバナンス研究センター(CIDEG)」の年次学術会議において、「日本経済の復活と中国への教訓」をテーマに基調報告を行ったが、以下は報告をベースに詳細を説明したものである。前号では日本経済が長期回復軌道に入りつつあるということ及び停滞を長期化させた2要因の分析を行った。今回は日本の過去と現在の中国には米国のドル垂れ流しに起因する3つの類似性があること、日本と中国には4つの相違点があることを指摘したい。日中の比較分析により両国の第二次世界大戦後の経済発展と挫折は、共通の事情により繋がっていることが分かる。そうした理解は今後の日中の政策選択と将来展望を考える際には必須であると考える。
(1) 大成長時代に入った日本(前号)
(2) 日中3つの類似性とその背景・・・米国債務の垂れ流し(本号)
(3) 日中4つの相違点・・・改革した日本、先送りを連発し続ける中国(本号)
(4) まとめ(本号)
(2) 日中の3つの類似性とその背景・・・米国債務の垂れ流しに起因
日本の過去と現在の中国には3つの顕著な類似性がある。第一のもっとも大事な類似性は、日中の顕著な経済発展とバブル形成の根本に米国のドル垂れ流しとその結果としての対外経常黒字の急増があったことである。第二に日本も中国もこの巨額の余剰資金を国内需要喚起に回すことに失敗し、不動産バブルを引き起こした。第三に米国は日本と中国が浴したこの国際分業上の優位性を突然奪い去った。日本に対しては日本バッシング、超円高で、中国に対しては関税引き上げ、輸出規制などで。
日中の経済発展とバブルの生成は全く自生的なものではなく、根本は米国主導の国際通貨体制に起因するとの理解が重要である。つまり1971年のニクソンショックによりドルが金の縛りを脱したことにより、米国は対外債務を激増させ、まず日本からそして最後には中国から巨額の輸入を行った。それは日本や中国の経済発展の原動力となったが、日中において大幅な対外黒字、巨額の余剰資金をもたらした。