「日衰・中隆から日隆・中衰へ」の必然性の分析 ①
~日本経済、バブル崩壊からの復活と中国への教訓~
【ストラテジーブレティン(356号)】
日本経済は戦後の高度成長、バブル崩壊と長期経済停滞を経て、再度長期回復軌道に入りつつある。他方中国は改革開放路線が定まった1990年代以降の30年間空前の大成長を遂げたが、やはり住宅バブル崩壊に直面し、経済困難に陥っている。2024年5月25日に、清華大学「産業発展と環境ガバナンス研究センター(CIDEG)」の年次学術会議において、「日本経済の復活と中国への教訓」をテーマに基調報告を行ったが、以下は報告をベースに詳細を説明したものである。
以下3つの論点について、展開したい。第一は日本経済が長期回復軌道に入りつつあるということ及び停滞を長期化させた2要因の指摘である。日本が経験したバブル崩壊と経済長期停滞の背景には外圧(米国の圧力と円高)と政策の誤りがあり、それが停滞を長引かせた。第二に日本の過去と現在の中国には米国のドル垂れ流しに起因する3つの類似性がある。第三に日本と中国には4つの相違点があることを指摘したい。日中の比較分析をすると両国の第二次世界大戦後の発展と挫折の背景には、共通の事情があることが分かる。そうした理解は今後の日中の政策選択と将来展望を考える際には必須である。
(1)大成長時代に入った日本(本号)
(2)日中3つの類似性とその背景・・・米国債務の垂れ流し(次号)
(3)日中4つの相違点・・・改革した日本、先遅れ続ける中国(次号)
(4)まとめ(次号)
(1) 大成長時代入りがほぼ確かになった
日本が長期経済停滞を脱し、大回復時代に入っていることはほぼ明らかである。それは資本主義において経済動向の最も早い先行指標である株価の力強い上昇から確認できる。