1971年体制の終焉、ドル一強時代の始まりか①
混沌の世界・米国ペシミズムと米経済の突出した強さ
【ストラテジーブレティン(342号)】
(1) 世界の混沌と高まる米国ペシミズム
世界は混沌の度を強めている。米中対立と中国による台湾進攻の可能性の高まり、ロシアによるウクライナ侵略、ハマスによるイスラエル攻撃とイスラエルの反撃、等戦後の民主主義、国際法に基づく国際秩序は灰燼に帰しつつある。オバマ政権が米国は世界の警察官の任には堪えられないと言い、トランプ政権はMAGAを唱えて同盟軽視を強めた。中国が異例のスピードで軍事増強を進める中で、米国防衛予算は、米ソ冷戦末期のレーガン時代の対GDP比7.7%から2022年には3.6%と半減した。
この米国の急速なプレゼンスの低下が、世界混沌の最大の理由であることは、論を待たない。また米国内では中間層の没落と分断、左右の対立、共和・民主両党内での求心力の低下と議会の機能不全化、など2024年大統領選挙を前に、政治の不透明性が高まっている。米国衰弱論はますます力を増している。それはドル価値の低下見通しに結び付く。米国株価の国際比較から見た割高さ、ビットコインやネット上ではやされて急騰するMeme(ミーム)株など一部市場の投機化などから米国株式バブル崩壊論(ことに日本や欧州では)根強く存在し、米国悲観論を強めている。それは中国、ロシア、イラン、北朝鮮などの専制国家を増長させ、世界経済の将来展望をも暗くする。
(2) 米国経済の突出した強さと金利上昇
米国経済の突出した強さ
このような蔓延する悲観論に対して、大きく食い違っているものが米国経済の突出した強さである。例えば過去1年余りの間にFRBはFFレートを合計で5%と過去最速ペースで利上げをしたが、米国経済は全く失速の気配がない。