新型コロナウィルス問題をどう見るか
【ストラテジーブレティン(243号)】
(1) 新型コロナウィルス感染-まだ最悪は見えない、サプライチェーンの遮断懸念
加速度的感染止まらず
新型コロナウィルスの蔓延が加速している。武漢での感染は公表されているペースを遥かに上回っているとみられる。チャーター便で武漢から日本に帰国した565人のうち8名が新型コロナウィルスに感染していた。1.4%というこの感染比率を武漢の人口1,100万人に掛け合わせると、15万人になる。中国当局は2月3日、感染者数は17,205人、死者数361人と発表したが、この数値は実態からかけ離れていると言えそうだ。香港大学の研究チームは1月25日時点で武漢市内の感染者が7.5万人に上ったとの推計を発表した(2月3日付読売新聞)。
ウィルス学の権威、東北大学押谷仁教授は、「武漢では想像できないスピードで感染が広がっている。中国の各都市では武漢から2~3週間遅れて流行が始まった。今後すべての場所が武漢のようになるか注視していかなければならない。・・・SARSと違い感染連鎖が見えない。潜伏期間でも感染するとなると、封じ込めを目指した公衆衛生対策にとって致命的だ。日本と中国との人の行き来を考えると、中国以外の国で最初に感染拡大するのが日本になる可能性は十分に考えられる。・・・今夏の東京五輪までに終息している可能性は低い」と述べている(2月3日付日経新聞)。
WHOが緊急事態宣言を発表すると、直ちに米国は中国に滞在歴(過去14日間)のある外国人の入国拒否、米中直行便の約3か月間の運航停止を打ち出した。既に60か国が中国人の入国制限を打ち出している。中国政府も武漢を封鎖し、春節休業を延長するなどの措置をとっているが、すでに蔓延は重慶、北京、上海、広州、深圳などに及んでおり、手遅れとなっている可能性がある。2月3日現在で中国国内の患者数は湖北省11,177人(うち武漢5,142人)、湖北省外6,028人とすでに武漢市以外に大きく拡大している(2月3日付日経新聞)。より広域、長期間の人的接触の遮断が必要になってくるかもしれない。その場合の経済的影響は深刻になるかもしれない。