ファーウェイ問題と米中貿易戦争、米国が圧倒的に優位に

2019/05/29

【ストラテジーブレティン(225号)】

米国、外堀を埋め持久戦に
米中貿易戦争が山場を迎え、米国の戦略全体像が明らかになってきた。米国の究極の狙いは中国の覇権奪取の野望をくじくこと。そのためには①最先端技術企業に躍り出たファーウェイの存在を抑えること、②中国の不公正な台頭を可能にした仕組み(知的所有権侵害、技術移転の強要、外国企業に対する差別、企業への政府補助金等)を変えること、③巨額な対中赤字(=ミルク補給)の停止、の3つにより中国経済の活力をそぐことにある。その手段が関税引き上げに関する展開、それとファーウェイに対する制裁の二つと整理できる。ただ米国は世界リセッションも、中国経済の破局も望んでいない。外堀を埋めたうえで(上記①~③)、持久戦に持ち込む構えであろう。

ファーウェイの技術優位を許容しない
ファーウェイに対する制裁の激しさは驚きであったが、米国政府の決意が示されたといえる。世界最強の5G関連設備企業に飛躍したファーウェイを事実上締め出すという決意を固めたようだ。ファーウェイは基地局の31%のシェアを持つ世界最大の基地局メーカー、スマホでも急躍進しアップルを抜き世界第二位になった。昨年8月成立の国防権限法に基づき、米国は政府機関のファーウェイからの調達を禁止した。そして5月16日にはファーウェイに対する米国機企業の製品供給を禁止する措置を決定。パナソニック、アームなど米国政府の規制に従う企業が続出している。ファーウェイは新型の製品開発が著しく困難になる。ファーウェイは米国から禁輸される半導体を自分で開発できるとしていた。実際ハイシリコンという強力な半導体設計会社を傘下に抱えている。だがアームからの技術がなければ、新規開発は無理。またグーグルが無料で提供しているスマホOSのアンドロイドは利用できるが、グーグルからのアプリ技術が使用できなければ、グローバルビジネスは不可能。今後さらに米国がファーウェイを追い込む手段としては、銀行取引の停止、ドル使用禁止という究極の手段もある。これまでファーウェイにグローバル金融サービスを提供していた、HSBCとスタンダードチャータード銀行は、すでにサービスを停止し、今はシティグループのみがサービスを提供している、とWSJ紙は報じている(2018年12月21日)。中国側が対抗できる手段はごく限られており、ファーウェイは経営困難に陥るだろう。

この苛烈な米国の制裁に正当性はあるのか。本当にファーウェイは黒なのか。イラン制裁違反を別とすれば、スパイチップの存在、バックドアからの情報窃盗などは十分な証拠がなく、言いがかりとの反論を完全には否定できない。しかし、米国にはファーウェイ拒否を正当化できる(正当化せざるを得ない)二つの理由がある。第一は2017年成立した中国の国家情報法により、政府が求めればスパイ行為をせざるを得ないという問題点である。そもそも中国企業にインターネットプラットフォームを委ねるわけにはいかないのである。第二はこれまでのファーウェイの台頭が不公正通商慣行の塊であったこと。一旦決めた以上、米国によるファーウェイ排除は揺るがないだろう。

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