株は上がるものである - 投資の日によせて(特別寄稿)
‐この事実を知っているかどうかが、苛烈な資本主義社会を生き残る鍵となる –

あれよ、あれよという間に連日、株価が上昇しています。買いそびれた人も大勢いるでしょう。こんなに上がってしまって、いまから投資しても大丈夫か?と不安に思われるかもしれませんが「株を買わない」という選択肢はありません。なぜかというと「株は上がるものだから」です。株というものは上がるようにできているのです。
ここでは話を簡単にするため、「株」とは「株式市場全体」または株式市場全体の動きを表すインデックス(株価指数)を指すものとします。ですから、株は上がるようにできている、と言っても個別銘柄についてはその限りではないとお断りしておきます。
また期間についても5年、10年、20年といった長期のスパンの話です。僕らは「年末まで」とか「向こう1年間」とかの期間を区切った相場の見通しを語りますが、それは不確実性が非常に高く、いくつもの前提のうえで述べている予想です。当然、そのような短期の予想は当たるときもあれば外れることもあります。それは言ってみれば株価の長期トレンドの周りで揺れ動いている変動(ノイズといっても良いかもしれません)を当てにいくようなものですから。短期的な株価変動は予想もつかずに上がったり下がったりするものです。しかし、長期的な株式市場全体の軌跡は右肩上がりで推移していきます。これは予想ではなく、「社会構造的なメカニズム」、もっと言ってしまうと自然界の法則に近いものだと僕は考えています。
なぜ「株は上がる」のか。紙幅の都合でここではその理由を述べることができませんが、とにかく株は上がるものだと信じてください。と、言っても理由も語らずして信じてくれというほど僕は図々しくないので、御用とお急ぎでない方は、こちらからその理由をお読みください。きっと腹落ちすること請け合います。
ところでこの株高を横目に、冷めた見方も広がっているようです。株価は最高値を更新しているのに、足元の物価高に賃金の上昇が追いつかず、庶民の生活は苦しいままであると。好景気の実感なき株高は虚構なのではないか、などの声が聞かれます。
なぜ多くの一般庶民に株高の恩恵が及ばないのか?この点については、いくつもの論点で語ることができますが、ここでは二点だけを述べたいと思います。
ひとつは資本主義というものの本質です。フランスの経済学者トマ・ピケティが『21世紀の資本』で示したように資本の収益率は経済成長率を常に上回ります。わかりやすい例を挙げれば、株価のリターンはサラリーマンの賃金上昇率より常に高いのです。ですから、汗水たらして働く労働者の収入より、株や不動産などの資産を有している不労所得者の収入のほうが高い率で伸びていくことになります。こうして「持てる者」と「持たざる者」との格差が拡大していきます。資本主義のもうひとつの特色として、資本は労働を搾取するというのがあります。これは足元のように人手不足が問題になるなかでも変わりません。良い例が利益などの企業が生み出す付加価値のうち人件費に回る割合を示す労働分配率の低下です。日本経済新聞が法人企業統計調査の結果をもとに、年度ベースで計算した結果、労働分配率は2024年度に53.9%となり、1973年度以来51年ぶりの低水準だったと報じています。一方で企業の内部留保は24年度末の時点で636兆円と過去最高を更新しました。資本か労働かで言えば、資本の取り分が厚い - それが資本主義の本質です。
次に、「なぜ多くの一般庶民に株高の恩恵が及ばないのか」についての二点目です。これは極めてシンプルです。多くの一般庶民が株を持っていないからです。株式を保有していなければ株高の恩恵が及ばないのは当然でしょう。
ここまで述べたことをまとめると、
- 株は上がるものである。
- 資本主義というものは資本家(=株主)に有利なようにできている。
- 多くの庶民が株主になっていないため株高の恩恵が及ばない。
もう、この問題に対する解決策は見えたも同然ですね。
僕は最近、『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる富の方程式』(スコット・ギャロウェイ著/児島修訳:ダイヤモンド社)という本の書評を書きました。同書はこう始まります。
「資本主義は人類史上、最も生産的な経済システムだ。同時に、これは強欲な獣のようなシステムでもある。資本主義は改革者より既得権益者を、貧しい者より富める者を、労働より資本を優遇し、喜びや苦しみを不公平な方法で分配する。」
その続きはこうです。「だからこそ私たち現代人には、資本主義と投資を理解し、うまくつき合っていくことが求められている。(中略)本書は、世の中のあるべき姿を提案するのではなく、現実の世の中の仕組みに関する真実を説き、そのシステムの中で成功するための最善策を提供する。」
著者ギャロウェイは、「世の中のあるべき姿を提案するのではなく、現実の世の中の仕組みに関する真実を説く」と言っています。冷徹で過酷な世の中を嘆いたり「あるべき論」を振りかざしたりしても何にもならない。それよりも世の中というものはこうなのだ、という現実を直視する。極めてリアリストの視線です。
自分自身で変えられるものなら改善に挑む価値があります。しかし、自分ひとりではどうにもならないこと - 世の中の不条理や運などの要素 ― にあれこれ頭を悩ませるのは時間の無駄です。自分ができること、そしてそれによって自分の人生が好転することにフォーカスしようというのが同書のメッセージで、深く共感します。
さて、結論は - もう、あらためて言うまでもありませんね。株を買うこと。投資をすること。That’s All We Need です。
株価はなぜ上がるようにできているのか - 株価上昇の本源的メカニズム【前半】
株価はなぜ上がるようにできているのか - 株価上昇の本源的メカニズム【後半】

また保証するものではございません。
・記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、
勧誘するものではございません。
・過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
・提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されることがございます。
・当社は本レポートの内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。
・投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。
・本レポートの内容に関する一切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに
転用・複製・配布することはできません。
・内容に関するご質問・ご照会等にはお応え致しかねますので、あらかじめご容赦ください。
マネックス証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第165号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 日本暗号資産等取引業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会
コラム&レポート Pick Up
相場見通し

投資アイディア


プロの見方

