10月相場の堅調スタートと燻る不安の火種

2025/10/03

いわゆる「月またぎ」で10月相場入りとなった今週の株式市場ですが、日経平均の値動きを辿ると、これまでのところ売りに押される場面が目立っています。とはいえ、大きく値崩れしているわけではなく、44,000円台での推移が続いています。

今週は9月の配当落ちに始まり、期末や期初のリバランスなど、下落要因が多い状況だったことを踏まえると、一定の株価水準を保っていることで、下値の堅さを見せている印象です。テクニカル分析的に見ても、4月に底打ちしてからの日経平均は、株価と25日移動平均線との乖離と修正を繰り返すリズムを刻みながら半年近く上昇基調を辿っていますが、2日(木)時点の株価は25日移動平均線より上に位置しており、足元の株価下落も調整の一環と見做すことができそうです。

また、米国株式市場に目を向けると、NYダウとS&P500がわずかに最高値を更新しているほか、ナスダック総合も最高値圏を維持しており、こちらも、米議会でつなぎ予算が成立できず、一部政府機関が閉鎖となって、週末3日(金)に予定されていた雇用統計の公表が延期される見込みとなっているにも関わらず、堅調な推移となっています。

「(相場は)不安の崖を登っていく」という相場格言がありますが、米FRBによる利下げ期待が相場を支えている格好です。今週発表された経済指標では、ADP雇用統計が市場予想に反してマイナスに転じたほか、9月ISM製造業景況指数の結果も49.1と、前月(8月分)から小幅に改善する一方で好不況の節目とされる50を下回っており、利下げ観測を後退させるものにはならなかったことが安心材料になった模様です。

再来週あたりからは、企業決算シーズンが本格化するタイミングでもあり、その内容次第では、足元で相場を牽引してきた大手テック株や金融機関株が再び騰勢を強める展開も期待されていますが、その裏では、米国株式市場に対する中長期的な警戒感の火種が燻っています。

今回のつなぎ予算をめぐる騒動をはじめ、債務の増加とそれに伴う利払い負担など、米国の財政状況に対する不安は深刻化しています。さらに、米トランプ政権による「米国第一主義」の政策運営に振り回されるなど、先行きの不確実性なども影響し、これまで安全資産のひとつとされていた、米ドルや米国債への信頼感が揺らぐ可能性があります。

実際に、米ドル指数が低迷しているほか、米10年債利回りについても、利下げ継続の見通しの割には4.1%台で推移しており、金利があまり低下していません。さらに、金価格も上昇しているなど、最高値圏に位置している米国株以外の資産の動向からは、リスクオンの雰囲気があまり伝わってきません。とりわけ、金価格の上昇については、海外の中銀などの公的機関において、米国債の保有額を減らす一方で、金を保有する動きも傾向として表れ始めています。

現在の米国株式市場は米債務への警戒感を材料として動いていませんが、予算をめぐる米議会の動きが長期化したり、米国債の入札状況が不調となる場面が増えたりした場合には、リスク材料として浮上してくることも考えられるため、一応、頭の片隅で想定しておく必要はありそうです。

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