けん引役不在の米国は不安定な相場が続く
先週のレポートで「レンジの下限を下放れるリスクが高い」と述べた通りの展開となってきた。(2月21日付けストラテジーレポート『日銀の利上げが日本株不振の元凶 ロシア・ウクライナを巡る欧米対立も懸念』)日経平均は半年間もみ合った3万8000円~4万円のボックスの下限を下放れた。
本稿執筆現在(2月28日午前9:50)、日経平均の下げ幅は1000円を超えてきた。今朝の下げの直接的な要因は米国株安、特にハイテク株の大幅安である。これについてはフィナンシャル・インテリジェンス部のレポートで米国株の割高さを指摘した通りである。(2月14日付けストラテジーレポート『米国株一辺倒への警鐘(1) 今までと違う「割高さ」』)米国株市場ではハイテク株の割高さに対する調整が始まっている。エヌビディア[NVDA]の決算が発表されたが、爆発的なグロースはすでにピークアウトして徐々に成長率が鈍化しているのが明確だ。けん引役不在の米国株はしばらく方向感の出ない展開となるだろう。言い換えれば不安定な相場が続く。これが日経平均の第一の重石となる。
しかし、国内にも株価の上値を抑える要素がある。その筆頭は、先週述べた通り、日銀の誤った金融政策だが、それに加えて低レベルの政治も挙げることができよう。
昔は「経済一流、政治は三流」などと言われたものだが、近年はどちらも三流以下だ。特に政治家の馬鹿さ加減には拍車がかかっている。
日本維新の会の県議会議員が、昨秋の知事選期間中に政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏に情報提供した問題などは論外中の論外だが、国政のど真ん中の議論も「何をやっているのか?」という低レベルさである。
多くの経済学者が反対する高校の無償化。ポピュリズムの極みであり、百害あって一利なしの政策のためにどれだけ無駄な時間を割いたのか。
「年収の壁」を巡る与党と国民民主、維新の迷走劇は見るに堪えない。これが今国会の目玉なのだから、いかに日本の政治が重箱の隅をつつくような、くだらないことをしているかの象徴である。
良し悪しは別として、アメリカに製造業を呼び戻そうとするトランプ大統領の姿勢と比べて天と地の差だ(くどいが「良し悪しは別として」である)。さらに言えば、トランプ大統領はなにがなんでもMake America Great Againだ。翻って日本の政治家からは、自分の国を良くしよう、という気概がまったく感じられない。だからまっとうな政策議論ができないのだろう。
中央銀行が間違った金融政策を推し進め、国政はこの国の経済成長のためになる政策を議論すらしていない。こういう状況で、株価はよく持ちこたえていると言えるだろう。
その理由は、第一に企業業績が堅調であり、一部の企業にとどまるものの経営改革の機運が高まっていること等が挙げられる。
配当利回り3%以上、ROE10%以上の銘柄をピックアップ
今日で2月も終わり来週からは名実ともに3月相場入りだ。ここは再び高配当株への投資で防衛的な運用を志向する局面だろう。
日経平均採用銘柄で配当利回り3%以上、ROE10%以上の銘柄をピックアップすると、こんなにたくさんある。株価が安くなった今は高配当株の仕込み時期だろう。日本経済新聞の取材にも答えたが、商船三井(9104)の配当利回りは6%超もある。バフェット銘柄の大手商社も安心して投資できるだろう。それらに加えてコマツ(6301)や日立建機(6305)などの建設機械メーカー株が魅力的に思われる。ダメだと思われている中国経済が実際には早くも復調しているからだ。コマツの建機の伸び率や機械稼働管理システムKomtraxから得られた地域別の車両稼働時間などを見ると中国がダントツで伸びているのが分かる。
日本株がさえない理由のもうひとつは、足の速い資金が日本を飛び越えて再び中国に戻っているからだろう。