気を付けておきたい米国市場の「変調」

2025/02/28

連休明けで迎えた今週の国内株式市場ですが、日経平均は26日(水)の取引で節目の38,000円水準を下回る場面を見せるなど、やや不安定な展開となっています。株価水準的には、まだ相場は崩れていないものの、足元の値動きが荒っぽくなっているのが少し気になるところです。

こうした株価の不安定さの兆候は米国株市場でも見られます。米主要株価指数(NYダウ・S&P500・NASDAQ)のそれぞれの状況を日足チャートで確認すると、26日(水)の取引終了時点でいずれも50日移動平均線を下抜ける状況となっており、相場の意識が下方向に傾きつつあるような印象となっています。

日米株式市場のこうした株価推移の背景にあるのは、このところ米国で公表される経済指標で弱い結果となるものが増えており、米国の景況感に対する不安が高まっていることが挙げられます。特に、この兆候が見え始めたのが、先週末の2月21日(金)からで、この日は米2月PMIをはじめ、ミシガン大学が調査している米2月消費者態度指数や、米1月の中古住宅販売などの経済指標が公表されたのですが、いずれも、前月分や市場予想を下回る結果となりました。

さらに、今週に入っても、25日(火)公表の米2月CB消費者信頼感指数や、26日(水)公表の米1月新築住宅販売も景況感の後退を匂わせる結果となっており、これらの経済指標を受けた米国の債券市場では、10年債利回りが大きく低下する動きを見せています。

これまでの相場の構図としては、「(経済指標の)悪いニュースは、(株式市場にとって)良いニュース」という格好で、経済指標の悪化が、米国の金融政策の利下げ期待を高めて米金利を低下させ、結果的に株価を支える傾向があったのですが、ここにきて、景況感の悪化への不安が素直に株価を押し下げる場面が増えてきています。

景況感と金融政策から見た相場サイクルとしては、景気や企業業績が好調な①「業績相場」が過熱すると、それに伴うインフレを抑制するため、金融政策当局が利上げなどの引き締めを行う②「逆金融相場」へと移行し、引き締め効果によって、景気や企業業績が抑圧される③「逆業績相場」を経て、インフレの落ち着きが見込まれる段階で、引き締めを緩和する④「金融相場」へと移り、再び①の「業績相場」に戻るというのが一般的な流れです。

米国株市場では2022年3月に利上げを開始し、2023年7月までに政策金利を0.25%から5.50%まで引き上げる「逆金融相場」となっていましたが、以降はその金利水準を維持する中で、インフレ鈍化傾向が続き、目立って景気が落ち込むことのない「ソフトランディング」見込みが高まったことで、2024年9月に利下げを開始する「金融相場」へと移行した格好ですが、本来であれば、足元で景況感の悪化を示す経済指標が増えたことは、利下げペースが加速する見通しにつながります。

ただし、米トランプ政権が高い不確実性を抱えていることや、足元で活発化している関税の動きの影響、そして、これから実施しようとしている減税政策の財政負担の大きさなどが懸念されていることを踏まえると、インフレの再燃や金利の高止まりしていくことも想定され、景況感が悪化しても、米FRBが適切に利下げをできないことも考えられます。その場合、「逆業績相場」の織り込み直しや、状況によっては「逆金融相場」に戻る可能性もあり、現在の状況が思ったよりも厄介かもしれないことは、意識しておいた方が良いかもしれません。

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