日本株不振の最たる要因は金利上昇

日本株が不振である。業績は上振れしているのに、株価がついてこられない。(グラフ1)

【グラフ1】日経平均とEPS(一株当たり利益)の推移

出所:QUICK社データより筆者作成

同じことだが、そのためPER(株価収益率)は低下している。好業績を市場が評価できないのは、いくつか要因があるが、その最たるものは金利の上昇である。10年債利回りは1.45%台まで上昇している(グラフ2)

【グラフ2】日10年債利回りと日経225予想PERの推移

出所:QUICK社データより筆者作成

国内の金利上昇を招いているのは、もちろん日銀の利上げ観測である。最近は日銀のタカ派的なスタンスが際立っている。中央銀行が金融を引き締めている国の株価が上がらないのは道理である。ECB(欧州中央銀行)が利下げを続ける欧州の株価が最高値をとってきているのを見ればわかることだ。その反対が日本である。

日銀はなんのために利上げをするのか。インフレを抑制するためというのが表向きの理由だ。しかし、日銀が利上げをしても今、日本で起きている物価高が収まることはないだろう。

今朝、総務省が発表した1月のCPI(消費者物価指数)の総合は4.0%上昇し、2年ぶりに4%台となった。4%と聞くと驚くが、うち食料が2.20%、エネルギーが0.82%である。4分の3が食料・エネルギーの上昇分だ。これらは金融を引き締めてもどうなるものでもない。金融引き締めはそれによって過熱している需要を抑制することが目的だが、食料やエネルギーを消費するなといっても無理である。

財・サービスの価格は伸びていない。財は横ばい、サービスはむしろ鈍化している。つまり、政府・日銀が掲げる「賃上げと物価上昇の好循環」というのは確認できていないのである。それにもかかわらず、利上げを急ぐ意図がまったくわからない。

間違った金融政策が日本株の上値を重くする

日銀はここにきて珍妙なロジックを持ち出している。

需給ギャップはマイナス(あるいは、強く見積もってプラスマイナス・ゼロ)なので、ディマンド・プルのインフレは起こりようがない。ところが、人手不足によって設備が稼働できないのだから、実際の設備=供給サイドが大幅に不足している。よって実際には需要超過でインフレが起きている。だから引き締めが必要というのだ。

本末転倒も甚だしい詭弁である。

人手不足は日本の構造問題なのでそもそも金融政策で対応できる話ではない。せいぜいできるのは企業の金利負担をできるだけ軽減し、もっと賃上げを促進し、労働のインセンティブを高めることではないのか。

日銀の利上げがインフレ抑制に効くのは円高を招いて輸入物価を押し下げることだけである。実際、その通りになっているわけだが、それで円高になれば、企業は円高、金利負担上昇、そのうえ人件費上昇で苦しむことになる。中小企業ほどその負担感は大きいだろう。いずれ国内の景況感は悪化してくるだろう。短観等で確認したい。

こうした間違った金融政策が続く限り、日本株の上値は重い。しかし、あえてドライなことを言うと、上場企業、とくに日経平均採用の225社はグローバルに事業を展開する超大手企業なので、前述の中小企業の苦境とは異なる環境にあるのも事実。

結局、当面はこのボックス圏を抜けることは難しいだろう。新年度の業績を織り込む5月以降ではないかと思う。

今後レンジの下限を下放れるリスクは高い

いまはレンジの下限に近付いているが、世界情勢の不透明感から押し目買いも入りにくい。レンジの下限を下放れるリスクが高いと思う。

ドイツ総選挙など欧州のリスクを警戒していたが、ここにきて欧米の軋轢が高まっていることが気懸りである。

トランプ大統領によるゼレンスキー氏への批判に欧州から非難があがっている。

ロシア・ウクライナ停戦という好材料が暗転するような事態にはならないでほしい。