プライドを捨てられない日産

日産自動車(7201)と本田技研工業(7267)の経営統合が白紙に戻った。1月に大阪で開催したマネックス全国投資セミナーのパネルディスカッションで参加者からこんな質問をいただいていた。「日産とホンダの経営統合はうまくいくのでしょうか?」やはり個人投資家の目線からでも、この両者の統合協議は不安視されていたようだ。

その質問に対して僕は以下のように回答した。その模様はもうすぐオンデマンドで公開されるので確認してほしい。

「うまくいくかどうかは、ホンダがどれだけイニシアティブをとるか、それに対して日産がどれだけプライドを脱ぎ捨てられるか(にかかっている)。これは経営統合というより、事実上、ホンダによる日産の救済合併であり、(中略)だから統合比率が問題になってくる(暗に対等合併なんかあり得ないというニュアンス)。ホンダが完全にイニシアティブをとって日産の経営陣にすべてお引き取りいただく - そこまでの強権を発動できるかどうか、だろう」

それができなかったということだ。日産はホンダから打診された子会社化案について取締役会で議論したが、反対する意見が相次いだという。この段になってまだ、「名門企業」というプライドにしがみついている。日産の取締役会はコーポレートガバナンス不全というより「老害」だろう。

資本の力で統合・集約を促進させる必要がある

これは日産だけの問題ではない。近年、非常に増加している事前合意なきTOB(株式公開買付)などで、日本企業も再編の動きが活性化している。ようやく日本企業の非合理的な面が排除され、収益性や資本の効率性が高まるとの期待が台頭している。そこに、こんなつまらない形での統合協議のとん挫はその機運に水を差すものだ。

この問題の解決は、PBR(株価純資産倍率)0.2倍台の日産が、鴻海などに買われることだ。経営統合なんて甘っちょろいものではなく、地に落ちた株価で買いたたかれることである。そうして、ダメな企業は市場から退出を迫られ、淘汰されるのだということを示すことである。

なぜか。その理由を述べる。とにもかくにも、日本の株式市場がグローバル投資家に評価されるためには日本企業の再編・集約化の流れを加速させていかねばならない。今回のことで、古い企業体質の古い経営陣によるプライドがそれを阻むということがわかった。それを打破するのは、「資本の力」以外にないからである。