FM 今週のポイント(8月10日)
*国際商品市況の下落が続いています。代表的な商品指数であるCRB 指数は7月後半から下げ足を速め、先週末時点で198.32 と2008 年のリーマンショック時を下回っています(12 年振りの安値)。原油市況も下げ足を速めています。WTI 先物は週末、44 ドルを下回り、4ヶ月半振りの安値を示現しています。原油価格の軟調さはシェールオイルの減産観測が後退していること、イランの生産増の思惑が広がっていること等の原油独自の要因もありますが、中国需要の減退等のマクロ要因の方が大きそうです。中国、ブラジル等の新興国を中心とする景況感の悪化が世界経済全般を下押しさせるリスクが顕在化してきたようです。
*一方で、米国経済は9月の利上げが可能なぐらいに改善傾向が持続しています。注目された7日発表の7月の雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比21 万5千人増加しました(事前予想22 万人増加)→3ヶ月連続で好調の目安となる20 万人の大台を超えたことになります(5月、6月の数値もそれぞれ上方修正されている)。雇用の内容には依然として問題点もありますが(時間あたり賃金の上昇率は前年同月比で2.1%上昇に過ぎず、FRB が目安としている3.5%を大きく下回っている)、金融正常化を早めたいFRB としては9月利上げに向けて市場との対話を一段と強化したいものと思われます。しかし、米国株式市場は7日、雇用統計を受けて続落しています(ダウ工業株30 種平均株価は17373.38 ドルと約半年ぶりの安値を記録)。この日は一時下げ幅を140ドル程度まで拡大しましたが、9月利上げに懐疑的な見方も出て買い戻しが入った模様です(引けは46.37 ドル安)。つまり米国株式市場は9月利上げについてポジティブとは考えていないようです。
*おそらく、前述したような新興国を中心とする景況感の悪化が世界経済全般を下押しさせるリスクを考慮した場合、米国の9月利上げを時期尚早と考えているようです。その場合、FRB が9月利上げに邁進するのであれば、マーケットとの対話が非常に重要です(毎年8月下旬に開かれる各国の中央銀行関係者が集まる恒例行事「ジャクソンホール会議」にイエレン議長が出席しないことは残念)。マクロリスクがある中でFRB の利上げスタンス(コミュニケーションを含めて)がマーケットの経路に大きな振れ幅を齎すものと考えられ、短期的なリスク度増大を含めて要注意です(利上げ後の上昇局面回帰、つまり長期上昇相場継続の可能性は依然として見込める)。
*そして、国内株式市場は膠着感が強いものの下値硬直性が高い状況が続いています。日経平均株価2万円大台割れは絶好の買い場との神話が形成されているようです(実際に国内需給を考えた場合、下値では大きな買い需要が見込まれることは事実)。先週は膠着感が強い中で出遅れセクター、出遅れ銘柄の上昇が目につきました。建設株がセクター全般として週を通じて買いが先行しました。また、9984 ソフトバンクが6月高値に迫る水準まで戻しています。いずれも下値硬直性が強い中での膠着相場がなせる現象ですが、米国の9月利上げを先取りした相場性格の変化の兆しかもしれません。今週は機械、電子部品等のハイベータ銘柄の持ち直しに注目したいと思います。
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