FM 今週のポイント(12 月15 日)
*週末のNY市場では原油先物価格が一段安となりました。WTI 期近物が5年7カ月ぶりに58 ド ルを割り込んでいます(今年の最高値をつけた6月中旬から40%以上も下落)。さすがに原油価 格の急落が続き、リスクオン相場で良いとこ取りに徹して来た株式市場も動揺を隠せません。原 油価格(ガソリン価格等)の下落は先進国を中心に個人消費支出拡大に繋がることは間違いあり ませんが、世界的な景況感の低迷が背景にあると考えればリスク資産を萎縮させることになりま す。事実、NY株式市場はダウ工業株30 種平均が先週、約3年ぶりとなる大幅な下落を記録し ました(677 ドル:3.8%)。この原油安の進行にロシアが困っています。欧米の経済制裁で減速し ていたところに主力輸出品である原油の価格が下落、ロシア経済は一段の苦境に立たされていま す→通貨ルーブルの対ドル相場は年初に比べて40%下落しています(原油安が継続すれば遠くな い将来に通貨危機が起こる可能性を憂慮)。ロシアのシルアノフ財務相は「ロシアは経済制裁で 年間400 億ドル、原油価格の30%下落で1000 億ドル喪失した」と述べています。原油価格の急 落により経済制裁を上回る打撃を蒙っていることをロシア自身が認めています→ロシア国内で は今回の原油価格急落を「米国の陰謀」とする見方が広がっているようです(80 年代に米国主導 の原油安が旧ソ連崩壊のきっかけになった)。ただし冷静に考えれば、レームダック化が進むオ バマ政権にロシアを追い込む力量は無いと思われ、ロシアの経済破綻はユーロ圏を通じて米国に も大きな悪影響を及ぼすことから今回はOPEC 減産を回避させたサウジ主導と考えて良いと思い ます(シェールガス開発を停滞させる:中小のシェールガス油井買収を目指す石油メジャーの思 惑とも一致)。サウジアラビアの採算ラインは80 ドルと言われており、現状の60 ドルレベルか らの大きな低迷長期化は避けたいところでしょう(60~70 ドルレベルを維持することでシェール ガス開発の停滞は避けられず、当初の目的は達成)。また、世界景況感の低迷懸念を強調する必 要は無いと思われます。リーマンショック時には原油価格が高値の150 ドルから40 ドルまで急 落しましたが、現状においてリーマンショックに匹敵するような火種は見受けられません(原油 価格がセンシティブに反応するリスク要因は見当たらない)。米国の11 月雇用統計は非農業部門 雇用者数の増加が32 万人を超えて、17 日に開かれるFOMC の声明文では、これまでの常套句で ある「QE3 終了後も『相当な期間』にわたって事実上のゼロ金利政策を維持する」から『相当な 期間』が削除されると想定されているぐらいです。日米欧中の製造業PMI もドイツを除いて50 レベルを超えています。世界景況感に原油価格の60 ドル割れ定着を決定づける根拠はありませ ん。また原油市場に他のリスク資産以上にセンシティブな先見性があるとも思われません。今回 の原油価格の急落は間も無く終焉、大きな反発は期待できなくともリーマンショック時のように 50 ドルを割り込むような下落にはならないものと思われます。 世界的な逆オイルショックとな らない限り、原油安は日本にとって大きなボーナスです。
*14 日投開票が行われた総選挙において自民・公明の与党が326 議席を獲得して参院で否決され た法案を再可決できる3分の2の議決数を維持しました。自民党は公示前の議席数に及びません でしたが、291 議席を確保してアベノミクスが信任された形になりました(投票率が戦後最低の 52%では実際は微妙)。マーケットにおいては事前の予想が楽観的(自民単独で300 議席を上回 る)だっただけに選挙結果を受けた急伸は難しいと思われます。ただし、マーケットフレンドリ ーなアベノミクス(株高政策)が継続することは間違いなく、安倍政権の長期安定化見通し(自民 党の獲得議席が同一首相の下で2回連続60%を超えたのは、池田勇人内閣による1960、63 年の 総選挙以来。衆議院議員の任期を2年残しながら解散を決断した安倍総理の政治力は、当面、確 実に高まることは間違いない)から財務省を中心とする所謂、財政派の影が薄くなるものと思わ れ、早期に策定される緊急経済対策の中身が充実されるものと考えられます→年末に向けた相場 上昇シナリオは不変です(N225 ベースで18000 円を超える可能性)。
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