新型肺炎のグローバル経済への影響を知る

2020/01/30

今生じている新型コロナウィルスによる衝撃は日増しに増大していく。また武漢滞在の邦人がようやく昨日(29日)にチャーター機に乗り羽田空港に帰った。第一便帰国の206人のうち4人に微熱や咳の症状があり、本稿執筆時点(30日早朝)ではまだ新型肺炎を検出したか否か不明である[1]。防措置として最も重要なのは手洗いである。マスクの着用を第一に考える人が大勢いるものの、予防措置の中で最も重要かつ基本的な目標はウィルスを体内に入れないということである。また、目からも感染し得るのであって一般向けのマスクは不十分であるから、むしろウィルスを経口しないという観点から手洗いのほうが効果的であるのだ。

 

図表1 新型ウィルス感染の主な予防法

(出典:毎日新聞

我々研究所の最新の中期の予測分析シナリオ「Tochter aus Elysium」で述べたとおり、今年(2020年)最も注目しなければならないことの一つはパンデミックである。

新型肺炎の経済面の影響は目に見えるほど増大していくなか、どれほど拡大していくのか、去る2003年のSARSの時のデータをも引用しながら比較していく。

まず新型肺炎の感染の最大国である中国に対する経済影響について説明する。今回武漢において臨時に準備された2つの病院の建設は去る23日に始まり2月3日以降使用できるそうだ。いずれも患者を1,500人以上収容できる[2]。その建設に当たり政府は新たに3億元(47億円相当)の追加予算を申請していると言い、新しい病院の建設はそれを更に超える金額規模となると推測できる。建設会社である国有企業が「報酬とコストを考えない、タイムリーに納品」を正式に発表したことから政府としても今次感染の重要性に対する認識はあるということだ。

病院の建設だけではなく、新しく投入される医療人員や薬品、医療用ベッド、更には薬品などのニーズは増大する一方、すべては税金から賄うので、国民経済に対する影響は必至である。また、シンガポールから武漢に渡航した人はすべて上陸した後に隔離されたという。それらの人に対する隔離の費用、体温検査の費用、更に心理医者のケア費用なども合計すれば膨大な支出になる。

以前では中国人がたとえ病気の時でもマスクを着用するという習慣はなかった。しかし今回の肺炎の影響を受け、武漢市以外の中心でもマスクを着用する人が大勢いる。また、国内生産不足の問題で日本メーカーへのオーダーも飛躍的に増えている。春節の休暇日数をさらに2日間伸ばして9日になっているだけでなく、大学も全面休校となっている。

以上述べた通り、新型肺炎の中国全体に対する影響は必至である。よりによって春節という「大儲けの時期」と相まってその打撃は更なるものだ。2003年のSARSの時には、中国における各四半期の国内総生産(GDP)成長率はそれぞれ11.1パーセント、9.1パーセント、10パーセント、そして10パーセントであった。SARSが最も流行った時期は第二四半期であり9.1パーセントだった[3]。中国全体の経済量を考えた場合、9.1パーセントの成長率は決して低いものではなかったものの、第一四半期と第三四半期と比べ1.5パーセント低下していることからSARSによる打撃は否めない。また当時の中国では工業が経済を牽引していたため、成長率ではまだ上向き成長であった。しかし今や中国の経済成長の牽引力となるのは第三次産業である。それはサービス業がメインである。人口の流動が大いに制限されそれは必ずサービス業に対してダメージを与える。

幸いなことに米中貿易協議に一応終止符がつけられている。とはいえ、まだ病気の治る方法や感染能力など現在確定されていない新型肺炎である。

ひとまず新型肺炎の中国に対する経済の影響を紹介したが、日本の場合はどうなるのであろう。まず観光業に対するダメージは必至である。それとは別に、一部隔離されていない人の存在は否めないので、今後医療器械の不足も考慮に入れながら、今後の感染拡大防止がごく重要である。普通は肺炎にかかることはたやすいことではないのに、今回武漢からのチャーター便206人にはすでに2人が肺炎だと検出されたことから、ストレスによる肺炎の発生もあり得る。健康管理を第一にすることだ。

世界的には、今後パンデミックの発生に備え、現在関連医療設備の準備が進められている。専門者の予測によると、今回の新型肺炎の世界経済に対する脅威は2003年のSARSより深刻なものであることがわかった[4]

 

“2003年当時、世界のGDPに対する中国の寄与度はわずか4%、世界の成長額に占める割合も同程度だった。しかし今年の寄与度は約17%、成長額に占める割合は29%に達する見通しだ。今までIMFが今年の世界の成長率見通しを3.3%に下方修正するとしていた主な理由はインド経済の低迷だった。新型コロナ・ウィルスの感染者が米国からオーストラリアと出現するようになり、一部の国は入国した者を追い返したり隔離措置を取ったりしている。中国の新たな大流行はまさしく新たな脅威だ”

 

余談だが、バスケットボールのレジェンドであるコービー・ブライアントが死去し全世界のバスケットボール・ファンに大きなショックを与えた。その死の原因は悪天候によるヘリコプターの着陸失敗ということだった。命の脆弱さを痛感した。2003年も同じようにSARSが流行り、2月1日にコロンビア号空中分解事故が発生し、7人の宇宙飛行士が犠牲になった。どうも類似性があるように思われた。どんなに苦しい状況にいても明日を信じながら元気に生活していこう。

グローバル・インテリジェンス・ユニット

リサーチャー 王 鵬程 記す

 

※出典

[1] https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-01-28/Q4T2M1DWRGG601

[2] http://epaper.ynet.com/html/2020-01/30/content_347988.htm?div=-1

[3] https://finance.sina.com.cn/china/2020-01-29/doc-iihnzhha5212175.shtml

[4] https://jp.reuters.com/article/coronavirus-econmy-breakingviews-idJPKBN1ZR0D6

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所
原田武夫グローバルマクロ・レポート   株式会社原田武夫国際戦略情報研究所
トムソン・ロイターで配信され、国内外の機関投資家が続々と購読している「IISIAデイリー・レポート」の筆者・原田武夫がマーケットとそれを取り巻く国内外情勢と今とこれからを定量・定性分析に基づき鋭く提示します。
・本レポートの内容に関する一切の権利は弊研究所にありますので、弊研究所の事前の書面による了解なしに転用・複製・配布することは固くお断りします。
・本レポートは、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。金融商品の売買は購読者ご自身の責任に基づいて慎重に行ってください。弊研究所 は購読者が行った金融商品の売買についていかなる責任も負うものではありません。