日本は、政治も経済も相場も米国次第、ああ神様・仏様・トランプ様
16日発表の6月の米小売売上高は前月比横ばいとなり、市場予想(▲0.3%)を上回りました。11日に発表された6月の米消費者物価指数がインフレ鈍化を示す内容であったことと相まって米国経済のソフトランディング期待が広がりました。それを受けてNYダウは15~17日に3日連続で最高値を更新しました。一方で、ナスダック総合指数はハイテク大手に集中していたマネーが他のセクターに広がるセクター・ローテーションの影響もあり、軟調な展開が続いています。
日本株は、先週17日から下落基調が続いています。1)ナスダック市場が軟調に推移していること、2)トランプ氏がドル高を問題視しているとの発言によって円高方向に為替が振れつつあること、3)バイデン政権が日本とオランダに半導体製造装置の対中輸出規制の強化を求めたこと、4)副大統領候補のバンス上院議員が指名受諾演説において同盟国との関係において「ただ乗りをさせない」と厳しい姿勢を示したこと、などが要因として挙げられます。
21日にバイデン大統領が次期大統領の候補者指名を辞退し、ハリス副大統領を候補者として推しました。仮に、民主党の候補者がハリス氏になったとしてもトランプ氏の優勢は変わらないと予想されます。ただし、大統領選と同日に行われる上下院選挙で共和党が独占する可能性は少なくなったと一部で見られています。トランプ氏再選後の不透明感に加えて、米政治体制のねじれ(が継続するのか)がどのように影響するのかなど、まだ混沌としており、大統領選挙まで米国株市場は手探り状態で且つ上下に振れやすい相場展開が続くように思われます。米国市場の混沌とその見解の変化によって為替や日本株も揺れ動く展開が続きそうです。
短期的には日本株の押し下げ要因となるものの、円高への転換の可能性が出てきたことは日本経済にとってはポジティブである、と考えます。
18日発表の6月の貿易統計では貿易収支が3カ月ぶりに黒字となりましたが、輸出数量指数は前年同月比▲6.2%となり、マイナスは5カ月連続となりました。為替が円安になっても国内生産が拡大する構造には既になく、円安の弊害の方が大きくなっています。しかし、貿易収支や個人投資家の対外純投資拡大など構造的円安要因が大きく、(日本は自力での円安解消には限界があり米国頼みであるだけに)、米政権の為替によるスタンスやFRBの利下げ見通しなど外部要因が大きくなっています。
いずれにしてもトランプ氏の発言など米国の政治情勢が市場を動かす季節がしばらくは続きそうです。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。