円安基調が終わるには米経済の悪化と米国株の下落が必要?
5日の米雇用統計、11日の米消費者物価指数など経済減速を示すデータが続いていることに加えて、9日・10日の議会証言においてパウエルFRB議長が「物価上昇率の低下と雇用情勢の減速を考慮すればインフレだけがリスクではない」と利下げの遅れが景気悪化を招くことに対する懸念を示したことで、9月利下げを市場は既定路線と捉えています(7月利下げの可能性も一部では指摘されます)。
こうした背景において米国債利回りは低下傾向にあります。米10年国債利回りは、雇用統計発表前の4日には4.36%でしたが、直近(15日)では、4.206%にまで低下しています。
米国債利回りの低下によって、米国株市場は活況にあります。ナスダック総合指数は7月1日から10日まで7営業日連続で最高値を更新しました。ダウ30種平均も15日に5月17日以来となる最高値更新を達成しています。日本株も、米ハイテク株の上昇と円安基調を受けて11日には日経平均株価が4万2000円台を記録しました。12日には前日の円高とスピード調整を受けて下落しましたが、日本株も足元では米国株高の流れに乗る展開が続くように見受けられます。
為替は11日の米消費者物価指数発表を受けて、ドル円が瞬間的に157円まで円高に急伸しました。ただし、これは日本の当局による介入と見られており、効果は一時的なものにとどまりそうです。貿易赤字の継続や新NISAをはじめとした対外純投資の拡大など構造的な円安要因が大きいことから、(米国の利下げ開始によって)日米金利差が多少縮まる程度では円安トレンドを覆すのは難しいと考えます。円安トレンドが変わるには、米国経済の減速感の強まりから米国の利下げが一段と進むこと、米国株の下落による(日本の投資家による)対外投資の縮小が生じることなどが必要に感じます。
今週は、16日:米小売売上高、17日:米住宅着工件数・米鉱工業生産(いずれも6月分)が発表予定です。国内では、17日:訪日外国人客数、18日:貿易統計(いずれも6月分)が公表されます。特に貿易統計は、6月上中旬分を見る限りでは円安にもかかわらず輸出の伸びが前年同期比+6.4%と小さく、輸出数量や貿易赤字においてネガティブインパクトの強い内容になるかもしれません。
13日にペンシルバニア州での演説中に銃撃を受けたトランプ元大統領は15日に共和党の大統領候補として正式に指名を受けました。また、副大統領候補としてラストベルトの貧困家庭で育ったバンス上院議員を選出しました。今回の銃撃事件を機にトランプ氏への支持は強まるものと考えます。トランプ劇場の第二幕による世界の変化を不安と期待を持って楽しみたいと個人的には思います。
5th Stage Labは真に自律した投資家を育成してゆくことを目的とした投資家教育&投資助言のサービスです。自律した投資家とは、経済、金融市場、企業経営、株価評価など一定の知識を持ち、シミュレーションや仮説を構築し、第三者の言説に(参考にすることはあっても)流されずに投資の意思決定を行い、想定したパフォーマンスを獲得できる投資家です。 ただ単に株価の動きを追うのではなく、金融・経済、企業経営、社会・産業動向、事業分析、株価バリュエーションなどファンダメンタルズ投資への理解を深め、メンタル面でも自立した自己を確立することを目指してゆきます。
社会の動きや人々の行動、経済の動向、ビジネスの仕組み。そうしたものが見えてくると世界観が変わります。自分で仮説を立て、予想し、投資を実行し、それが現実化する過程で、人生そのものに対する自信も深まります。
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この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。
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