経済減速を示すデータが着実に増えている
先週は日米ともにあまり芳しくない経済指標の発表が続きました。
まずは日本ですが、4月の機械受注において民需(17日発表)は前月比▲2.9%でした。5月の貿易統計(19日)1兆2,212億円の貿易収支赤字。5月の消費者物価指数コア(21日)は前年同月比+2.5%と高水準が続きました。とりわけ貿易統計では輸出は金額ベースでは前年同月比+13.5%の増加となっていますが、これは為替が前年同月比14.9%円安となったためであり、数量指数では4カ月連続のマイナスとなっています。円安でも輸出量は増えない構造にあり、輸入物価の上昇によるコストプッシュ型のインフレが続きやすい構造となっています。
米国では経済減速を示すデータが増加しています。5月の米小売売上高(18日発表)は前月比+0.1%と市場予想(+0.2%)を下回りました。米議会予算局が18日に公表した2024会計年度の財政赤字見通しは1.9兆ドルと2月時点の試算から3割の増加となりました。5月の米住宅着工(20日)は前月比▲5.5%の127.7万戸となり2020年6月以来の低水準となりました。20日発表の週間の新規失業保険申請件数は23.8万件と前週よりやや減少したものの高水準を維持、継続受給者数は1.5万人増でした。
経済指標だけ見ていると弱気に傾きそうな環境にもかかわらず、日米ともに株価は堅調に推移しています。米国株はAI関連企業の物色が続いていることに加えて、FRBによる利下げ期待から長期金利が緩やかに低下傾向にあります。
日本株はまずは米ハイテク株上昇の影響がまず挙げられます。円安によって(ドルベースでは変わらなくても)グローバル企業や輸出型企業の円ベースでの価値が引き上げられている可能性が考えられます。また、東証の資本コストを意識した経営推進を追い風にアクティビスト等が台頭したことによって割安株が引き上げられた影響も挙げられます。
しかしながら、円安トレンドの継続は、物価上昇を通じて消費者の購買力を減衰させるだけに株価の上値は重く、仮に大きく上昇する局面があっても持続的ではないと考えています。
今週から来週にかけては、28日:5月の米個人消費支出(PCE)価格指数、7月1日:ISM製造業景況指数(6月)、2日:米雇用動態調査(5月)、3日:FOMC議事録、ISM非製造業景況指数(6月)など米主要統計の発表が続きますが、一段と減速感の強い内容が出てくれば、株価の方向感に変化が生じる可能性もあると考えます。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。