国内企業業績見通しに対する失望はそろそろ終局へ、ここからは米国経済への注目が強まる
筆者がかねてから指摘してきましたように、新年度(24年度)の国内企業の会社予想(ガイダンス)は、市場の見通し(アナリストコンセンサス)を相当程度下回る可能性が濃厚になってきたようです。(1年後の)結果と見るまでは、アナリスト側が楽観的過ぎたのか、企業側が慎重であるのかは分かりませんが、4月以降に日本株の調整が進んだ大きな要因として捉えることができると考えます。ただし、決算発表も間もなく終えることから、業績見通しの織り込みはそろそろ終えるものと考えています。
ここから市場の注目は、米国経済と、円安に対する日銀の政策正常化の加速に重きが置かれると考えます。13日にイエレン米財務長官がBloombergのインタビューにおいて、「極端なボラティリティを抑える以外の目的で為替レートに手を加えないことで主要7か国は合意している」と、特定の国(日本)には触れなかったものの釘を刺しました。これより為替介入に対するハードルはかなり高くなったと考えられ、今後は円安が大きく進行するようであれば日銀に対して金融政策による対応が求められるものと推察いたします。
米国経済は、コンファレンスボード消費者信頼感指数(4/30発表・4月分)、ISM製造業景況指数(5/1発表・4月分)、ISM非製造業景況指数(5/3発表・4月分)、米雇用統計(5/3発表・4月分)と景気悪化を示す内容が続きました。9日発表の週間(5/4終了週)の新規失業保険申請件数は23.1万件(前週比+2.2万件)と直近3カ月のレンジ(20~22.2万件)を上回りました。
10日に公表されたFRBの半期報告書では、オフィス物件に絡む延滞が増えており、銀行はさらなる損失に備えているとの指摘がなされました。
こうした米国経済指標の悪化は、従来はFRBの金利引き下げ時期の見通しが前倒しに働くという点で、米国株式市場はポジティブに反応してきました。しかし、インフレ率の高止まりが続く中で、FRB高官のタカ派姿勢は変わっていないように見受けられます。先週には、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は「金利を現状水準に長期間維持する可能性が高い」、ボストン連銀のコリンズ総裁は「従来の想定以上に長く金利水準を維持する必要がある」との考えを示しました。
15日は米小売売上高(4月)、米消費者物価指数(4月)が公表されます。インフレの高止まりが続くようであれば、悪い経済指標に対する市場の反応方向が大きく転換する可能性もありそうです。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。