新年度の企業業績は織り込み済み、本決算通過で材料出尽くし!!
先週の日経平均株価は週間で1,377円の下落となりました。週初めの機関投資家の利益確定売り(1日)、1日のイスラエルによるシリアのイラン大使館空爆に伴う原油価格上昇(2日~)、台湾地震(3日)、また週を通して米国市場でのインフレ懸念による長期金利の上昇と株価下落が重石となったと考えられます。
1日発表の米ISM製造業景況指数(3月)は50.7と2月(47.8)ならびに市場予想(48.5)を大きく上回りました。こうした強い経済指標とFOMC関係者のインフレを懸念する発言が2日から4日にかけて続いたことで米長期金利が上昇し、米国株を押し下げる要因となりました。
クリーブランド連銀のメスター総裁は「利下げが早すぎるリスクの方が大きい」と強調。アトランタ連銀のボスティック総裁は年内の利上げ予測を2回から1回に減らしました。パウエル議長はFOMC参加者の多くが年内の利下げを見込んでいると触れたものの、最終判断はデータ次第と強調。ダラス連銀のローガン総裁は「物価見通しの上振れリスクがますます気がかりだ」と述べました。
5日発表の米雇用統計(3月)では非農業部門雇用者数が前月比+30.3万人と市場予想(+20万人)を大きく上回りました。ただし、平均時給は前年比+4.1%と2月(+4.3%)と低下したことから賃金上昇によるインフレ加速は避けられるとの楽観がやや戻ってきたようです。米国で雇用者数が堅調であるにも関わらず賃金上昇が抑えられている点に関しては、移民増の影響があるとされ、その結果としてインフレは抑えられるとの見方があるようです。一方で移民増がやがて住宅価格を押し上げるとの懸念も存在します。
今週は、10日:FOMC議事要旨(3/19-20分)、米消費者物価指数(3月)、11日:米生産者物価指数(3月)、ECB理事会が注目されます。米国のインフレを巡って、金利と株価が振れやすくなっており、指標の発表毎に右往左往する展開がしばらくは続くと思われます。
日本株に関しては、現在の株価水準は、既に新年度(24年度)の企業業績は織り込んだ水準になっていると考えられます。そのため、現状のコンセンサスよりも企業の会社計画が上回らない限り、4月下旬からの決算においては反応薄となる可能性を想定します。むしろ、企業が会社計画において慎重な態度をとるようであれば売り込まれると考えます。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。