小型成長株への流れがようやく始まったようだ
年明けまでの米国株市場は、米金利低下見通しが株高の根拠となっていましたが、FRBの追加利上げの可能性が霧散した後は、米国経済の堅調さが株高を促しているようです。25日発表の10-12月期の米GDP統計では実質GDPの前期比は+3.3%と市場予想(+2.0%)を大きく上回りました。また、PCEコアデフレーターは前期比年率+2.0%とFRBがターゲットとするインフレ率に落ち着いており、経済のソフトランディング期待が強まっています。
市場では引き続き半導体関連への注目度が高い状態が続いています。スマートフォンやPCの需要もAIチップを搭載したサムスン「GalaxyS24」の登場を契機に同時通訳機能等を搭載したスマートフォンやPCの普及が予見され、半導体需要先の6割を占めるこの分野の回復から成長が加速するとの見方も台頭しているようです。米ガートナー社は、2024年の半導体市場は16.8%増、2025年は15.5%と予測していますが、それを上回る市場成長も期待されている模様です。
日本株は、米国株の上昇、金利差による円安の持続、中国からの退避資金、新NISA開始、東証の市場改革などを支援材料として、株価の高原状態がまだ続きそうです。足元の企業決算には中国経済減速の影響やインフレによる国内の購買力の実質的低下などマイナス要因の影響を受ける企業もあり、やや弱含みとなる可能性も残りますが、市場の楽観ムードが反転するほどのネガティブ要素ではないと思われます。ただし、バリュエーション面からの高値警戒感も強まりつつあり、積極的に上値を追う展開も見通しにくいと思います。
こうした環境下では、これまで出遅れ感が強かった小型株(特に成長株)への資金流入が強まる可能性を予想します。先週(1/22週)はTOPIXが若干マイナス(▲0.5%)となる中で、東証グロース市場250指数は3.2%のプラスとなりました。
今週は30-31日に米FOMCが予定されています。政策変更は見込まれておりませんが、市場はパウエル議長の発言に注目しています。足もと直近では議長の緩和的な発言を見込むかのように米金利は低下していますが、発言内容によっては反動もあるかもしれません。しかし、大きな影響はないと考えます。30日:コンファレンスボード消費者信頼感指数(1月)、米雇用動態統計(12月)、2月1日:ISM製造業景況感指数(1月)、2日:米雇用統計(1月)と米経済指標の発表も続きますが、大きなサプライズがない限りは無風と思われます。
中東情勢においてイランが支援するフーシー派による米軍への攻撃等から原油価格が上昇気味にあります。懸念材料があるとすれば、やはり地政学リスクと言えるでしょう。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。