流動性相場はどこまで続くのか? コロナバブルと同等なら日経平均は最大で38,500円
18日の台湾半導体製造受託大手TSMCの決算発表を機に、半導体関連やハイテク大手を中心に日米の株式市場が沸騰しています。19日には2年ぶりに米S&P500指数が最高値を更新しました。週明けの22日はNYダウは38,000ドル台に到達しました。日経平均株価も先週半ばは高値警戒と利食いから調整したものの、19日、22日と大幅高を続け、36,000円台半ばまで上昇しています。
市場を大きく動かしたのはTSMCの24年の売上高見通しでした。米ドル建で20%前半から20%半ばの伸びを示すと公表されたことに市場は反応しました。また、18日には米議会でつなぎ予算(分野により3/1~8までの期間)も成立したことも懸念材料が先送りされてポジティブに作用したかもしれません。17日発表の米小売売上高(12月)は前月比+0.6%(11月+0.3%:予想+0.4%)と加速し、米国経済の底堅さとポジティブに捉えられたようです。
米国債利回りは上昇傾向を強めたことからドル高・円安に推移し、日経平均株価の押上げにも影響したように見受けられます。
日本株についてはバリュエーション面からは既に割高な水準にあることは繰り返し述べてきましたが、さらに割高に向かいつつあります。しかし、現状は“楽観”=流動性相場であり、それが当面持続される可能性が強まっています。そうした前提において、どこまでの割高が許容される可能性があるかについて少し触れておきたいと思います。TIWが算出している日経平均の妥当レンジにおいては株価の収益性・成長性から算出されるインプライド・リスク・プレミアム(IRP)を6.5~7.0%に設定して算出しています(通常は来期ベースと再来期ベースを期間按分して算出している)。再来期ベースのIRPに着目すると1月19日現在では6.3%です。このIRPが6%を下回ったのは、(TIWがデータを蓄積しているリーマンショック以降では唯一)コロナ禍の過剰流動性相場であった2020年11月末から21年2月上旬であり、最低では5.8%を記録しています。仮に1月19日に6.0%を適用すると37,650円、5.8%を適用すると38,500円と算出されます。おそらく、この辺りが割高を許容できる最大上限と思われます。
本日(23日)の日銀金融政策決定会合では政策変更は市場予想通り行われませんでした。市場にとっては(事前に株価に織り込んでいたことから)サプライズがなかったことによって、目先の利食いの場となった可能性もあります。同様に、30-31日の米FOMCにおいても政策変更は見込まれていないが、(何もないことを見越して事前に相場が形成されるので)やはり利食いの場になる可能性もあるかもしれません。ただし、一時的な調整も市場のセンチメントを変える何か大きな切っ掛けがない限り、流動性相場はまだ続く可能性があるように思えます。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。