日銀のマイナス金利解除は、金利上昇というマイナス面よりもデフレ脱却とポジティブに捉えられる?
先週はNYダウ平均が足踏みをする一方で、日経平均株価は週間でほぼ2,200円の上昇となりました。また、週明けの15日には一時36,000円台を記録しました。想定外の高騰でした。
この背景としては次のようなことが考えられます。
1)能登半島地震等からの心理面での回復。
2)米国株の上昇との比較では日本株は出遅れ感が強かったこと。
3)昨年末の米金利低下からの反動(金利上昇)に伴い、為替が円安に揺り戻されていること。
4)日本経済のデフレからの脱却が期待されていること。
5)新NISA開始による株式市場への期待。
6)東証が15日から毎月、企業の“資本コストや株価を意識した経営”への取り組みを発表するとしたこと。
また、足もとでは小売業(スーパー、コンビニ、ディスカウントストアなど)の上方修正が目立っていることや、11日発表の貿易統計12月上中旬分(速報)においては不振が続いていた輸出が前年同期比+13.6%であったことも要因として挙げられそうです(ただし、輸出の増勢が継続するかは疑問が残ります)。
日本株はバリュエーション面からは既に割高な水準にあることはこれまでも述べてきた通りですが、米国経済のリセッション懸念が後退しつつある中では、現状の“楽観”が持続される可能性も少なくはないと言えそうです(直ちに崩れる理由は見出しにくい)。
11日に発表された12月の米消費者物価指数は総合で3.4%(11月3.1%、予想3.2%)、コア(食品とエネルギーを除く)で3.9%(11月4.0%、予想3.8%)となりました。実績は予想値を上回ったのですが前月からの指数の低下を市場は評価したのか金利面での反応(上昇)は特には見られなかったようです。
来週から再来週は、主要中央銀行の金融政策決定会合が続きます(ECB:25日、日銀22-23日、FRB:30-31日)。いずれも政策変更は見込まれておらず、波乱は少ないと思われます。
昨年末頃から、日銀のYCC解除に関しては、株式市場の見方は肯定的に変わりつつあるように感じています。マイナス金利解除は(金利上昇によるマイナスよりも)デフレ脱却の象徴として株価にポジティブに反応する可能性も意識しておく必要があるかもしれません。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。