本日の大幅急騰は売り方のポジション解消の可能性があり、追従は危険

2023/10/10

 

7日にイスラエルに対して、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが多量のロケット弾を撃ち込むと同時に侵入攻撃をしました。これにイスラエルが対抗し、ガザ地区への空爆を行うとともに、ガザ地区の完全包囲を開始し、電力、食料、燃料などの立ち入り禁止を発表しました。また、8日にはレバノンの親イラン武装勢力ヒズボラがイスラエルへの攻撃を行うなど、戦線が広がりつつあるようです。

こうした状況に対して、質への逃避から米国債の利回りが下落し、またFRB高官の引き締めに対する“ハト派”的な発言もあり、9日の米国株式市場は反発しました。
本日の日本株市場は前日の米国市場の反発を受けて大幅高となっていますが、やや不自然にも見えます。あくまでも推測に過ぎませんが、売り方のポジション解消による買戻しも影響しているものと考えます。

先週は、マッカーシー下院議長の解任動議の成立(3日)によって、11月17日で切れるつなぎ予算後の米国の政府機関閉鎖への懸念が意識されたほか、米国雇用において引き続き強い状況が幾つも示されました。3日発表の8月の雇用動態調査(JOLTS)においては、非農業部門の求人件数は961万件と前月(892万件)、予想(880万件)ともに大きく上回りました。5日発表の週間(9/24-30)の新規失業保険申請件数は20.7万件と市場予想(21万件)とほぼ同水準ですが、依然として低い水準にとどまっています。
6日発表の9月の米雇用統計では非農業部門就業者数は前月比+33.6万人と市場予想(+17万人)を大幅に上回りました。また、7月、8月も上方修正されました。これらを受けて米10年国債利回りは一時4.89%と16年ぶりの高水準にまで上昇しました。ただし、9日にはイスラエル/ハマスの戦争を受けて4.62%にまで低下しております。

戦争による世界経済への影響や米長期金利の低下を受けて、FRBは次回のFOMC(10/31-11/1)での利上げを見送るとの見方が急速に台頭しております(利上げが終わる可能性も)。しかしながら、他方では戦線が拡大・長期化した場合の原油供給への影響などが懸念されており、原油価格上昇によってインフレが強まる可能性も示唆されています。原油価格はやや上昇したもののまだWTIで86ドル前後/バレルにとどまっておりますが、注意が必要です。

今週は、11日:米生産者物価指数(9月)、FOMC議事録(9/19-20分)、12日:米消費者物価指数(9月)が注目されますが、まずはイスラエルとその周辺の情勢を見守りたいと思います。

日本株に関しては、本日の急騰を追いかけるべきではないと考えます。
その一つの理由として、中国関連銘柄に広がっていた暗雲が姿を現しつつあるように見えます。4日発表の不二越(6474)の23/11期3Q決算は、中国の景気減速の影響を受けて純利益は前年同期比▲32%の減益となりました。6日発表の安川電機(6506)は、為替レートの前提を大幅に円安に修正したにもかかわらず、24/2期通期業績見通しは据え置かれました。受注は好調だった前年までの反動減もありますが、2Qは前年同期比でACサーボ▲47%、インバータ▲33%、ロボット▲15%と大きく凹んでおります。半導体関連の影響が大きいものの、中国に関しては先行きもフラット(底這い)に見ているという厳しい状況です。
EV関連や太陽光関連などを除けば、設備関連は中国以外でも弱含み。この7-9月期の決算発表にあまり(上方修正への)期待を持たないほうが良いかもしれません。

 


 

5th Stage Labは真に自律した投資家を育成してゆくことを目的とした投資家教育&投資助言のサービスです。自律した投資家とは、経済、金融市場、企業経営、株価評価など一定の知識を持ち、シミュレーションや仮説を構築し、第三者の言説に(参考にすることはあっても)流されずに投資の意思決定を行い、想定したパフォーマンスを獲得できる投資家です。 ただ単に株価の動きを追うのではなく、金融・経済、企業経営、社会・産業動向、事業分析、株価バリュエーションなどファンダメンタルズ投資への理解を深め、メンタル面でも自立した自己を確立することを目指してゆきます。

社会の動きや人々の行動、経済の動向、ビジネスの仕組み。そうしたものが見えてくると世界観が変わります。自分で仮説を立て、予想し、投資を実行し、それが現実化する過程で、人生そのものに対する自信も深まります。

藤根靖昊のマーケット概観やセミナーのご案内、コラムの更新情報などをメールでお知らせしております。
もし、ご関心いただけるようでしたら、まずは メールマガジン(無料)にご登録下さい。

 

この記事を書いている人

藤根 靖昊(ふじね やすあき)

  • 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
  • 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
  • 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。
アイフィス・インベストメント・マネジメント株式会社
5th Stage Lab「シン・日本株投資」   アイフィス・インベストメント・マネジメント株式会社
短期の業績変動や株価のブレに惑わされることなく、何が本質であるかを見極められる「自律した投資家」を目指していくための気構えやスキル、実例解説などをお伝えしていきます。
本資料は、アイフィス・インベストメント・マネジメント株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づいて作成しておりますが、正確性の保証は致しかねます。情報が不完全または要約されている場合もあります。本資料に記載する価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。また、第三者による人為的改ざん、機器の誤作動などの理由により本情報に誤りが生じる可能性があります。 本資料は、情報の提供のみを目的としており、金融商品の販売又は勧誘を目的としたものではありません。また、本資料は将来の結果をお約束するものではありません。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。本資料の情報に基づいて行われる判断について、当社は一切の責任を負いません。内容に関するご質問・ご照会等にはお応え致しかねます。 本資料の著作権は、原則として当社に帰属します。本資料の転用、複製、販売等の一切を固く禁じております。

このページのトップへ