ECB・FRB・日銀の動静によっては小波乱も
14日にECB理事会、来週19-20日にFOMC、21-22日に日銀金融政策決定会合と主要中銀の政策決定会合が続きますが、いずれも波乱を含んでいるように見受けられます。
7日発表のユーロ圏4-6月GDP改定値は前期比+0.1%と速報値(+0.3%)から後退し、7-9月には再びマイナスに転落する可能性がでてきました。欧州のインフレ率はピークアウトしているものの消費者物価指数は5.3%(8月)とまだ高く、今週の会合において利上げは見送られたとしても引き締め的な政策を維持する必要があり、リセッション懸念が強まりつつあるように思えます。
5日にサウジアラビアが現行の日量100万バレルの原油自主減産を12月まで3カ月延長することを表明。同日にロシアも年末にかけて日量30万バレル削減することを発表しました。原油価格の上昇から再びインフレ懸念が台頭しつつあります。足元発表された米国経済指標も予想よりも強い内容であり、FRBによる金融引き締めの長期化が懸念されています。6日発表のISM非製造業景況感指数は54.5と前月比+1.8pt(市場予想は横ばい)となりました。7日発表の週間(8/27-9/2)の新規失業保険申請件数は前週の改定値から▲1.3万人減の21.6万件(市場23万件)でした。
19-20日のFOMCでは政策金利は据え置かれるという見方が有望ではありますが、経済見通し(SEP)において24年末の政策金利見通しが引き上げられることが懸念されています。
日銀は前回(7/27-28)の決定会合において、債券買い入れの水準を1.0%に引き上げたことから今回は無風と思われていましたが、週末をはさんで急転しています。
植田総裁は、9日付の読売新聞のインタビューにおいて「(マイナス金利の解除について)物価上昇に確信が持てれば選択肢」と述べ、「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロでもない」とその時期も示唆しました。それにより、長期債利回り・為替ともに敏感に反応しています。観測気球として地ならしを図っているとも考えられ、9月会合の記者会見においてもう一歩踏み込んだ発言を行うことも考えられます。
ウクライナでは辞任したレズニコフ国防相の後任であるウメロフ氏が外交の専門家であることからロシアとの停戦交渉が始まるとの憶測も一部にあるようです。金融政策や国際情勢が大きく変化する可能性も考えられますので、当面は中立的なポジションで動静を見守りたいと考えます。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。