FOMCを控えて慎重な動き
12日発表の6月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比+3.0%と5月(+4.0%)から大きく低下し、市場予想(+3.1%)も下回りました。コア指数においても+4.8%と5月(+5.3%)・市場予想(+5.0%)を大きく下回っています。これを受けて、FRBによる利上げ長期化の懸念が大きく後退しました。7月のFOMC(25-26日)での+0.25%の利上げはほぼ確実と見込まれていますが、9月、10月の利上げは見送られるとの見方が市場では強まりつつあるようです。米国債利回りは低下し、米国株価は反発しました。
一方で、日本株は13日には前日の米CPI発表を受けて大きく反発したものの、円高・ドル安と、7月の日銀金融政策決定会合(27-28日)において日銀が金融政策を修正するとの海外短期筋を中心とした観測から上値の重い商状が続いています。5月の実質賃金(7日)は前年同月比▲1.2%(14か月連続マイナス)、5月の消費支出(7日)は前年同月比▲4.0%(3カ月連続マイナス)。6月の景気ウオッチャー調査(10日)は現状判断指数が5カ月ぶりに前月比マイナスなど、新型コロナの5類への引き下げ後の需要回復に一服感が出ていることや、中国経済の不振なども影響しているものと考えられます。
10日発表の中国消費者物価指数(6月)は前年同月比横ばいとなり2年4カ月続いた上昇が止まりました。17日発表の中国4-6月期GDPは前年同期比(実質)+6.3%でしたが、昨春の上海ロックダウンの反動が大きく影響しています。前期比での増加率は+0.8%と1-3月期(+2.2%)から大きく低下しました。
米国経済に関してはリセッションには陥らないとの見方が増えつつあるようです。ただし、まだ今後の経済指標によってセンチメントが変化する状況にあると考えます。米銀の自己資本規制が強化される見通しであることにも警戒が必要です。規制の対象範囲が、従来の国際活動を行う銀行や資産7000億ドル以上の銀行から資産1000億ドル以上へと拡大される模様です。また、FRBも高官発言からはまだタカ派姿勢を堅持していると考えられます。
17日にロシアはウクライナなどとの黒海穀物合意について18日からの「停止」を通告しました。今後の国際商品市況への影響が懸念されます。
今週は、6月の米小売売上高(18日)をはじめ、米経済指標の発表が続きます。市場予想に対する各々のプラス・マイナスは勿論のこと、利上げや経済に対する市場の解釈によって株価は上下に振れやすい展開が続きそうです。ただし、来週にFOMCを控えることから米国株・日本株ともに慎重な動きが続くと考えます。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。