輸出関連企業には注意が必要
先週の米国株市場は週間(週末比較)でダウ工業株は211ドルの上昇でした。金利低下からテクノロジー株が買われる流れがありましたが、景気悪化を示す経済指標から上値の重い展開が続いています。
3日発表のISM製造業景況感指数(3月)は46.3と前月(47.7)より悪化。市場予想(47.5)も大きく下回りました。4日発表の2月の雇用動態調査(JOLTS)は、求人件数が(下方修正された)1月よりも63.2万件も下回る993.1万件にとどまりました(予想は1,040万件)。5日発表のISM非製造業景況感指数(3月)も2月の55.1から51.2に低下しました。ただし、7日発表の米雇用統計は非農業部門雇用者数が、2月分が上方修正されたことに加えて3月分も23.6万人増とほぼ市場予想におさまりました。
銀行の信用リスク問題に関しては、4日にJPモルガン・チェースのCEOであるジェイミー・ダイモン氏が株主への手紙の中で「危機はまだ終わっておらず、去ったとしても余波が何年も続く」と指摘していたことが明らかになりました。銀行の貸倒引当の積み増し、引き受けやM&A助言ビジネスの逆風、規制強化による対応コスト増などを指摘しております。また中堅中小銀行から大手銀行への預金シフトもまだ収まっていないようです。5日にダラス連銀が発表した管轄地区の融資態度調査では、20年の新型コロナ禍直後の水準にまで悪化した模様です。
今週は、12日:米消費者物価指数、13日:生産者物価指数、14日:小売売上高(いずれも3月分)が予定されています。物価指数はそれぞれ改善(低下)が見込まれていますが、小売売上高は2カ月連続でのマイナス(予想▲0.4%)が懸念されています。
国内では新たに就任した植田総裁が次回の会合(4/27~28)にでも金融政策の修正を行うとの見方も一部にはありましたが、10日の記者会見の内容からは当面は“継続”するものと捉えられます。経済再開・インバウンド効果などから内需関連には明るいムードが続くと考えられますが、米国経済の減速感や半導体など先端技術分野での中国との軋轢拡大から輸出関連企業には逆風が続くと考えています。7日発表の貿易統計3月上中旬分(速報)において輸出は金額ベースで1.1%増にとどまっており、為替を考慮すれば数量指数では2桁減となっている可能性が指摘できるでしょう。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。