不可解な株価上昇。深追いせず利確ポイントを模索へ!
2日のアトランティック連銀のボスティック総裁による「(次回FOMC:3/21-22において)0.25%の利上げに断固賛成する」との発言に米株市場はポジティブに反応しました。ダウ工業株は2日3日の2日間で729ドル上昇となりました。次回のFOMCで0.5%の利上げの可能性を市場は危惧されていただけに、その可能性を否定するコメントはポジティブに受け止められたのでしょう。また、ボスティック総裁は前日(1日)には「政策金利を5%~5.25%の間に引き上げ、2024年もしばらくはその水準で維持する必要がある」との認識を示していたことから、市場で織り込んでいた(0.25ポイントの利上げ)3回が2回に留まる可能性も期待されたものと考えられます。
2月のコンファレンスボード消費者信頼感指数(2/28発表)が2カ月連続のマイナスとなったことを除けば、インフレが鎮静化しつつあるという経済指標はあまり見当たりません。10-12月の米労働生産性指数(確報:2日発表)において単位労働コストの伸びが速報値から上向きに改定、週間の新規失業保険申請件数(2/19-25:2日発表)は19万件と前週比0.2万件減少、2月のISM非製造業景況感指数(3日)は55.1と1月(55.2)よりは低下したものの市場予想(54.5)を上回ったことなど、まだ金融引き締め継続の根拠となるものが優勢です。
今週は、7日(上院)・8日(下院)にパウエルFRB議長の議会証言が予定されています。今月21-22日のFOMC前の最後の登壇となります。8日:米雇用動態調査(JOLTS・1月)、10日:米雇用統計(2月)、14日:米消費者物価指数(2月)も注目を集めそうです。
国内でも9-10日に日銀金融政策決定会合が予定されています。黒田総裁にとって最後の会合となるだけにサプライズの予想も一部にはあるようですが、政策変更はないものと考えられます。1月の鉱工業生産指数(2/28)は前月比▲4.6%の低下、10-12月法人企業統計(2日)の全産業経常利益は前年同月比▲2.8%減。東京都区部2月の消費者物価は電力・ガス料金の政策要因から生鮮を除く総合は+3.3%と1月(+4.3%)から低下しましたが、コアコア(生鮮とエネルギーを除く)では逆に前月比0.2ポイント上昇していました。
足元の株価上昇の要因は良く分かりません。米国債利回りがほぼ利上げを織り込んだことや、金利上昇に市場が慣れてきたことなども挙げられますが、短期筋など売り方の買戻しの面も強いように感じます。ChatGPTの登場を足掛かりにして半導体需要が回復すると見方が台頭してきたことも影響しているのかもしれません。しかし、米国経済のリセッションの可能性はまだ強く残っており、2月のユーロ圏の消費者物価指数は前年同月比+8.5%と1月(+8.6%)よりわずかに低下しましたが、ドイツ、フランス、スペインなど主要国で逆に上昇しています。現在の株高は一過性のものである可能性が強いと考え、利確ポイントを模索としたいと思います。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。