2023年も当面は難しい相場環境が続く見通し
年明けから大分たってしまいましたが、(新年最初の投稿ですので)皆様、新年あけましておめでとうございます。
さて、1月4日に公表されたFOMC議事録要旨(昨年12/13-14)において、当局者が予想する今年の利上げ回数は中央値で3回、タカ派では4回であることが明らかとなりました。また、「23年中の利下げを想定する参加者は一人もいなかった」と明記され、FRBのタカ派姿勢があらためて浮き彫りとなりました。しかしながら、市場では利上げ回数を2回、年内に利下げに転じるとの見通しもあり、当局と市場の乖離が大きい状態が続いています。
6日の米雇用統計(12月)の発表においては、非農業部門雇用者数が前月比+23.3万人増と市場予想(約20万人増)」を上回り、失業率も(11月の改定値3.6%から)3.5%に低下したにも関わらず、平均時給伸び率が前年比+4.6%と予想(+5.0%)を下回ったことを市場では評価しています。また、ISM非製造業景況指数(12月)に関しても前月比▲6.9ポイントの49.6と50を割ったことによる経済減速への懸念よりもインフレ鎮静化とのポジティブな解釈(=期待)を織り込みました。
当局は、「23年に少なくともあと1ポイントの利上げが必要」(ミネアポリス連銀カシュカリ総裁)、「政策金利は最終的に5%をいくらか上回る水準まで引き上げられてから利上げが打ち止めになる」(サンフランシスコ連銀デーリー総裁)、「4-6月の早期までに政策金利を5%超に引き上げ、その後にその水準を長期にわたって維持すべきだ」(アトランタ連銀ボスティック総裁)などタカ派の見解が続いています。
しかし、こうした当局者の発言に関しても、市場が楽観的になることでインフレ抑制効果が弱まることを懸念した抑止的なデモンストレーションとの見方もあり、当局のスタンスと市場の見方の乖離がしばらくは継続されそうです。その結果として、株価は上下に大きく振れやすい展開がしばらく続くことが予想されます。
米国では今週から金融機関を皮切りに決算発表が続きます。企業業績には下振れの懸念が強い中で、バリュエーション調整が再び強まる可能性もあります。
今週は12日の米消費者物価指数(12月)に注目が集まっていますが、市場の期待に届かないようであれば株価の下落は避けられないと予想します(前年同月比:10月+7.7%、11月+7.1%、12月予想+6.5%)。仮に期待を上回っても当局関係者からの抑制的発言が続く可能性も考えられます。
日本国内では、1月5日に新発10年物国債の表面利率が従来の0.2%から0.5%に引き上げられたことを受けて、最高落札利回りが、日銀が12月に変更した変動幅の上限0.5%に達しました。日銀にさらなる上限引き上げを迫る動きが強まることが懸念材料として燻りそうです。
企業業績に対する見通しも来期においては上方よりも下方に向かう可能性が強いだけにそうした織り込みが一段落するまでは本格反騰の可能性は低いと考えます。
TIWがアナリストコンセンサス予想と市場の期待利回り等から算出している日経平均株価の妥当レンジも下方トレンドにあります。現状(1/6時点)では上限27,830円・下限25,850円となっていますが、今後のアナリスト予想によってはもう一段低下する可能性も否定できません。
投資家は、キャッシュポジションを確保しつつ、株価が浮揚した際に利確に徹し、下げた時に押し目を拾う細かい調整が求められそうです。
昨年も難しい相場環境でしたが、今年も少なくとも前半は難しい局面が続きそうです。かなりボラタイルな市場展開を想像しています。ひとまずはキャッシュポジションを積み上げて下落局面をじっと待つという戦略も悪くもないかもしれません。
しかし、自分なりに仮説をもってそうした難局に積極的に臨むことを楽しみたいと考えています。
本年も積極果敢に参ります。どうぞよろしくお願いします。
藤根靖昊
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。