深度はまだ不明だが、年明けには企業業績の減速を織り込む局面も
15日に中国国家統計局が発表した10月の社会消費品小売総額は、前年同月比▲0.5%とマイナスでした。11月11日の「独身の日」のセールスも例年のような高揚感は見られませんでした。10月の工業生産は、前年同月比+5.0%と前月(+6.3%)から減速傾向。16日にQUICK・ファクトセットが発表した民間予想では22年の中国実質GDP成長率は3.3%に留まる見通しであり、年初の見通し(5.1%)からの下方修正が顕著です。同じく16日に発表された中国主要70都市の新築住宅価格動向(10月)も58都市で前月から価格が低下しました。価格が下落する都市が広がっています。また、足もとでは新型コロナ感染が再び拡大していることも懸念されます。14日にバイデン米大統領と習近平総書記との会談が行われましたが、経済面での協調に関しては依然として不透明な状態です。
米国・欧州がインフレ対策で利上げを推し進めていることで両地域の景気悪化が懸念されています。こうした環境下では日本企業の業績への影響が顕在化することも容易に想像されます。22日の日経朝刊マーケット面(スクランブル)においては、「強すぎるアナリスト予想」と題して現在のアナリストの強気の投資評価が維持できないだろうと指摘しています。同新聞記事が対象としているのは22年度(今期)でありますが、23年度(来期)を概観するならば既に兆候は色濃く表れつつあるようです。
TIWが算出している日経平均のコンセンサスDI(前週比で予想EPSが変化した企業の内のプラスになった比率)は前週(11/14-18)において来期予想ベースで40%を下回りました(39.1%)。欧米での経済減速と円安効果が剥落する来期においては、減益は不可避のように思われます。株価は、米利上げ停止によるバリュエーション改善の恩恵を得る前に、来期業績への減益見通しが織り込まれる過程を経験する必要があると考えます。来期業績にマーケットの視線が向く年明け以降には顕在化するものと考えます。
足もとは、経済指標の悪化は、FRBの利上げペース鈍化観測から株価を下支えしておりますが、経済減速そのものを懸念する局面に向かう可能性があると考えます。
今週は、日本(23日)・米国(24日)ともに休日があることから、小動きな相場展開が予想されています。23日にFOMC議事録要旨(11月分)、マークイットPMI(米・欧)の発表が予定されています。25日は、クリスマスセールの初日となるブラックフライデーですが、購買の前倒しが生じていると推察され、その影響がセール初日の売上や12月の米小売売上高にどのように表れるのかが興味深いところです。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。