丸井の共創サステナビリティ~コネクティビティの効果はいかに

2018/02/13 <>

・12月に、丸井グループのIRデイとして、決算説明会とは別に、「共創サステナビリティ説明会」が開催された。昨年に続いて2回目である。サブテーマは3つで、①お客、ワーキング、エコのインクルージョン(多様性の受容)、②社外取締役との対話、③新規事業(アニメ)の進捗であった。

・第1のインクルージョンでは、会社としての公認プロジェクト活動が紹介された。丸井は、社員が新しい価値創造に向けて手を挙げる組織風土づくりに力を入れている。いくつもの活動があるが、社員の7割(4500名)がいずれかに参加したいと手を挙げている。

・その中の重要な1つである公認プロジェクトは、公募によって選ばれたメンバーが会社公認で、就業時間内に集まり活動している。1)マルイミライプロジェクト(お客の多様性の受容)、2)健康経営推進プロジェクト(意識や役割を変え、パフォーマンスを発揮)、などに取り組んでいる。プロジェクトメンバーが自発的に活動し、マネジメント層がサポートしていく。

・お客のダイバーシティとインクルージョンを図るマルイミライプロジェクトでは、高齢者、障害者、LGBT(性的多様性)、訪日客など、インクルージョンが必要な人々を受け入れる仕組みを通して、新しい顧客の創造を実践している。

・障害者が見やすい店内サインへの改良、LGBTの受け入れとして、トランスジェンダーの就活スタイルファッションのサポート、世界的な人権啓蒙イベントの一環である東京レインボープライド(性的少数者のパレード)への参画などを行い、社会的にも評価を受けた。

・ワーキングインクルージョンでは、社員の健康に力を入れている。病気にならないという守りではなく、いきいき働けるような攻めの健康経営に取り組んでいる。食事と睡眠が良好な社員は生産性が高いというデータを見える化し、健康な社員は人事評価も高いということもはっきり示した。

・マネジメント層に対しては、身体、情動、精神性、頭脳を高め、自らと組織の幸せを目指すレジリエンスプログラムを実施している。これを受け入れているマネジメント層に対して、上司は自分たちの気持ちを汲んでくれると、部下の評価も上がっている。

・エコロジカルインクルージョンでは、リユース+リデュースに力を入れている。再利用、再販売に加えて、ぴったりの商品を提供することで、廃棄を元から減らすことにも成果を上げている。実際、自分に合わないので、履いていない靴を減らすという視点で、靴のリデュースではサイズの品揃えを増やしている。

・そのために、体験ストア(完全在庫レスストア)を強化している。Eコマースで商品をみて、お店に来てぴったりサイズを選び、それをネットで注文して自宅に配送するという仕組みである。これによって、①在庫ロス、②返品率、③包装材、④物流負荷が減少する。一方で、商品に対する顧客満足度は上がって、ビジネスの高付加価値化にも貢献する。

・食のリデュースでは、自分にぴったり合うサイズ(量)へのこだわりとして、小分け、少量パック、小型少量化、量り売りを実現させている。こうしたリデュース売上高比率の向上を1つの重要なKPIとしている。

・次に、社外取締役である堀内光一郎氏(富士急行社長)が丸井のガバナンスについて語った。もともと大学時代の同級生であるが、当時、特に親しいわけではなかったという。人物として信頼できるということで、2008年に社外取締役に就任した。

・当時、社長3年目の青井氏は将来への危機感を強めており、事業の大転換を図る必要性を感じていた。①クレジットカードビジネスに関わる利息の返還、②小売り不振による店舗の見直し、③家具ビジネスからの撤退、などが相次いだ。一方で、1)小売りとカードの新しい連携、2)共創経営の実践、3)社員を大切にする働き方改革、4)お客様のインクルージョン、5)株主、投資家視点の経営によって、ビジネスモデルを一新してきた。

・既に、EC(Eコマース)、コト消費、シェアリングエコノミーには手を打っており、新しい組織、ITシステムも作り上げている。最大の課題は後継者作りで、ここはすぐにはできないが、手は打ちつつある。創業4代目リーダーが、どう後継者を選びバトンタッチするか。創業家は、余人をもって代えがたいところはあるが、カギは執行役員の育成にある、という見方である。

・社外取締役は3名おり、それぞれ監督と助言で実効を発揮しているという。事前説明も十分にあり、取締役会での議論も充実している。トップの判断について、大きな異論を唱えたことはなく、リスクテイクに対して的確に応援すべしというスタンスである。

・新規事業では、アニメ事業の説明がユニークであった。2015年秋から準備を始めて、2016年4月に事業がスタートした。①モノからコトへ、②アパレルからアニメへ、③店舗中心から、小売り・カード・ウェブの三位一体へ、という流れに沿ったものである。

・映画製作委員会への参画、アニメイベントの開催、アニメ事業を通じたカード入会促進、アニメグッズのマルイウェブチャンネルでの販売へと広げていった。

・とりわけ「ゴジラ」コンテンツとのコラボは大きな成果を上げている。店舗イベントでは、撮れる、動かせる、触れる、というゴジラ体験が人気である。定借ショップでは、ゴジラ・ストアTokyoが、定借+運営委託+ゴジラカードによる独自のビジネスモデルを構築した。ゴジラエポスカードは女性にも大人気となっている

・アニメビジネスの全社グループへの貢献LTV(ライフタイムバリュー=商品利益+カードLTV+WEBLTV)は、2015年度3億円、2017年度20億円に対して、2020年は70億円を目指している。

・アパレル市場は縮小しているが、アニメ市場は既にアパレルよりも大きく、かつ伸びている。アパレルに行列はできないが、アニメには行列ができる。まさにアニメはカタリスト(触媒)として本業を活性化させる効果を発揮している。

・丸井のサステナビリティ活動では、インクルージョンが価値創造に貢献している。社外取締役のガバナンスも、実効性についてイメージが湧く。新規事業のアニメは、ゴジラに代表されるように、本業の新ビジネスモデルに貢献している。

・青井社長のいう財務情報になる前の会社の価値創造のプロセスが、「プレ財務情報」としてよく理解できた。つまり、価値創造プロセスとのコネクティビティ(結びつき)は高いと評価できる。株主になって今後ともフォローしたい企業の1社であろう。

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